ピクトグラムでわかる呼吸器内科

respiresi.exblog.jp ブログトップ | ログイン

カテゴリ:びまん性肺疾患( 19 )

肺移植

c0367011_22165195.jpg
c0367011_22165377.jpg
(日本呼吸器学会ホームページhttp://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=45より引用)

本邦は脳死ドナーが少なく生体肺移植の方が多い.
移植後はステロイド,代謝拮抗薬(ミコフェノール酸モフェチル,アザチオプリン),カルシニューリン阻害薬(タクロリムス,シクロスポリン)の3剤併用が基本.
金銭面,ドナーの確保,移植後の免疫抑制,移植までたどり着けるか,家族の協力などの問題がある.
高度の肺高血圧を伴うものや,慢性気道感染を伴うものは両肺移植で,それ以外は片肺移植.

脳死肺移植
レシピエント適応基準
1. 治療に反応しない慢性進行性肺疾患で,肺移植以外に救命の有効な手段がない
2. 移植医療を行わなければ残存余命が限定されると判断される
3. 年齢が,両肺移植の場合55才未満,片肺移植の場合には60歳未満である
4. 精神的に安定しており,移植医療の必要性を認識し,これに対し積極的態度を示すとともに,家族および患者を取り巻く環境に充分な協力体制が期待できる
5. レシピエントが移植手術後の定期的検査と,それに基づく免疫抑制療法の必要性を理解でき,心理学的・身体的に充分耐えられる

レシピエント適応疾患
肺動脈性肺高血圧症,特発性間質性肺炎,慢性肺気腫,気管支拡張症,肺サルコイドーシス,肺リンパ脈管筋腫症,Eisenmenger症候群,その他の間質性肺炎,閉塞性細気管支炎,肺好酸球性肉芽腫症,びまん性汎細気管支炎,慢性血栓塞栓性肺高血圧症,多発性肺動静脈瘻,α1アンチトリプシン欠損型肺気腫,嚢胞性線維症,その他肺・心肺関連学会協議会で承認する進行性肺疾患

レシピエント除外基準
1. 肺外の活動性の感染巣の存在
2. 他の重要臓器に進行した不可逆的障害が存在する(悪性腫瘍,骨髄疾患,冠動脈疾患,高度胸郭変形症,筋・神経疾患,肝疾患,腎疾患)
3. きわめて悪化した栄養状態
4. 最近まで喫煙していた症例
5. 極端な肥満
6. リハビリテーションが行えない,またはその能力が期待できない症例
7. 精神社会生活上に重要な障害の存在
8. アルコールを含む薬物依存症の存在
9. 本人および家族の理解と協力が得られない
10. 有効な治療法のない各種出血性疾患及び凝固異常
11. 胸膜に広範な癒着や瘢痕の存在
12. HIV抗体陽性

生体部分移植
レシピエント適応基準
1. 肺・心肺移植関連学会協議会の定める脳死肺移植の適応を満たすこと
2. 原因疾患と全身状態を鑑みて脳死肺移植を受けられる可能性がほとんどないと判断されること

ドナー適応基準
1. 「日本移植学会倫理指針」で定める範囲内の親族(6親等内の血族,配偶者と3親等内の親族)
2. 「日本移植学会倫理指針」で定める範囲の年齢であること(成人)
3. レシピエントと血液型が適合すること
4. 肺機能が正常であること
5. 全身性の活動性感染症がないこと
6. 悪性腫瘍がないこと(治癒したと考えられるものは支障ない)
7. 提供手術に関連する死亡率を増すような合併症がないこと


脳死肺移植認定施設
東北大学,京都大学,岡山大学,長崎大学,獨協医科大学,大阪大学,福岡大学


Timing to Referral

Guidlines for Referral

Guidelines for Transplantation

COPD,α1アンチトリプシン欠損型肺気腫

BODE index 5以上

BODE index 710 または以下の少なくとも1つがある

急激な高CO2血症(50 mmHg)と関連のある急性増悪での入院

酸素治療にもかかわらず肺高血圧,肺性心

FEV1 20%以下かつ,DLCO20%以下または気腫の分布が均一

嚢胞性線維症,他の原因による気管支拡張症

予測FEV130%以下か,FEV1が急速に低下(特に若い女性患者で)

ICU管理を要する肺疾患の増悪

抗生剤加療を要する増悪頻度が増える

不応性,かつ/または反復性の気胸

塞栓術でコントロールされない反復性の喀血

酸素依存的な呼吸不全

CO2血症

肺高血圧

IPFNSIP

肺活量に関係なく組織または画像でUIPの根拠

f-NSIPの組織での根拠

組織または画像でUIPの根拠があり,以下のいずれかがある

予測DLCO39%以下

6ヶ月間で10%以上FVCが低下

6-MWTSpO288%未満

HRCTで蜂巣肺(fibrosis score>2

f-NSIPの組織での根拠があり,以下のいずれかがある

予測DLCO35%以下

6ヶ月間で10%以上FVCが低下またはDLCO15%以上低下する

肺高血圧症

治療にかかわらずNYHA ⅢまたはⅣ

急速な進行

最大限の治療でもNYHA ⅢまたはⅣが続く

6-MWTが低下または低値(350m未満)

エポプロステロールまたは同等のものの持続静注が効かない

心係数 2L/min/m2未満

右房圧 15 mmHg以上

サルコイドーシス

NYHA ⅢまたはⅣ

運動耐容能の障害と以下のいずれか

安静時の低酸素血症

肺高血圧

右房圧 15 mmHg以上

Langerhans細胞組織球症

NYHA ⅢまたはⅣ

肺機能と運動能力の重篤な障害

安静時の低酸素血症

LAM

NYHA ⅢまたはⅣ

肺機能と運動能力の重篤な障害(例えばVO2 max50% predicted

安静時の低酸素血症


(Orens JB, et al. International Guidelines for the Selection of Lung TransplantCandidates: 2006 Update?A Consensus Report From the Pulmonary Scientific Council of the International Society for Heart and Lung Transplantation. J Heart Lung Transplant; 25: 745-55, 2006.)



by respiresi | 2015-05-02 22:18 | びまん性肺疾患 | Comments(0)

薬剤性肺障害

c0367011_00585381.jpg

ガイドライン
呼吸器学会のガイドラインが標準的.EGFR-TKIのように稀に出るが致命的となりやすい薬剤もあれば,mTOR阻害剤のように頻度は多いが軽快しやすい薬剤もあり,添付文書に対応が載っているので参照を.

診断基準
1. 原因となる薬剤の摂取歴がある
2. 薬剤に起因する臨床病型の報告がある
3. 他の原因疾患が否定される
4. 薬剤の中止により病態が改善する
5. 再投与で増悪する

DLST(drug lymphocyte stimulation test)は180%を基準とするが偽陽性・偽陰性が多く信頼度が低い.薬剤負荷試験は十分なインフォームドコンセントが必要.


(著作権の関係で図表は 日本呼吸器学会. 薬剤性肺障害の診断・治療の手引き. メディカルレビュー社; 2012.15, 36, 39 を参照)

AIP/DAD pattern

Amiodarone, CPA, gefitinib, erlotinib, cetuxumab, panitumumab, methotrexate

COP/BOOP pattern

Bleomycin, methotrexate, CPA, 金製剤, amiodarone, salazosulfapyridine, penicillamine

NSIP pattern

Amiodarone, methotrexate, penicillamine, 金製剤, hydralazine

HP pattern

gefitinib


治療は軽症なら被疑薬の中止,中等症はPSL 0.5~1 mg/kg/dayの併用,重症例はステロイドパルス療法.


【参考文献】
1. 日本呼吸器学会. 薬剤性肺障害の診断・治療の手引き. メディカルレビュー社; 2012.


by respiresi | 2015-04-23 00:57 | びまん性肺疾患 | Comments(0)

その他吸入関連の肺炎

c0367011_23513226.jpg
リポイド肺炎
病巣内に脂質の出現が特徴的な肺炎.外因性リポイド肺炎は油脂の吸入による肺炎.石油製品の吸入,油性の点鼻薬や下剤(現在では稀),火を吹く大道芸人など.

金属ヒューム熱
アーク溶接,フッ素樹脂からの吸入数時間後にインフルエンザ様の症状を呈する.数日で自然軽快する.


by respiresi | 2015-04-21 23:51 | びまん性肺疾患 | Comments(0)

過敏性肺炎(HP:hypersensitivitu pneumonitis)

c0367011_23370989.jpg
抗原曝露と小葉中心性の陰影を見たら急性過敏性肺炎を疑う.
間質性肺炎で,上肺優位・小葉中心性の陰影は慢性型過敏性肺炎(潜在性発症型)を疑う.
間質性肺炎を呈するが,特発性と異なり治療で改善の余地が大きいので,必ず見落とさないようにする.急性過敏性肺炎,再燃症状軽減型を疑ったら,まず入院して抗原回避と気管支鏡検査ののち、帰宅誘発試験.

c0367011_23233939.jpg

細かい名前のついた過敏性肺炎は,コルク肺,サトウキビ肺,線香肺,綿糸肺,麦芽労働者肺,木屑病,セコイア肺,温室栽培者肺,機械工肺,養蚕従事者肺,畳製造者肺,象嵌製造者肺,鰹節製造者肺,貝細工製造者肺,楓皮肺・・・いろいろ.
c0367011_23234247.jpg

診断
I. 臨床像
臨床症状・所見1)~4) のうちいずれか2つ以上と、検査所見1)~4) のうち1) を含む2つ以上を同時に満足するもの
1. 臨床症状・所見
1) せき、2) 息切れ 3) 発熱、4) 捻髪音ないし小水疱性ラ音
2. 検査所見
1) 胸部X線像にてびまん性散布性粒状陰影
2) 拘束性換気能障害
3) PaO2低下
4) 血沈亢進,好中球増多,CRP陽性のいずれか一つ
5) BALFのリンパ球増加
6) ツ反陰性化
II. 発症環境
1)~5) のうちいずれか1つを満足するもの
1) 夏型過敏性肺炎は夏期(4~10月) に、高温多湿の住宅で起こる
2) 鳥飼病は鳥の飼育や羽毛と関連して起こる
3) 農夫肺はかびた枯れ草の取り扱いと関連して起こる
4) 空調肺,加湿器肺はこれらの機器の使用と関連して起こる
5) 有機塵挨抗原に曝露される環境での生活歴
III. 免疫学的所見
1)~2) のうち1つ以上を満足するもの
1) 抗原に対する特異抗体陽性
2) 特異抗原によるリンパ球増殖反応陽性
IV. 吸入誘発
1) ~2) のうち1つ以上を満足するもの
1) 特異抗原吸入にまる臨床像の再現
2) 環境暴露による臨床像の再現
V. e. 病理学的所見
1) ~3) のうちいずれか2つ以上を満足するもの
1) 肉芽腫形成 2) 胞隔炎 3) Masson体

確実 Ⅰ,Ⅱ,ⅣまたはⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅴを満たすもの
強い疑い Ⅰを含む3項目を満たすもの
疑い Ⅰを含む2項目を満たすもの

急性過敏性肺炎の治療


軽症

抗原回避

中等症(抗原回避で改善しない)

PSL30 mg/dayで開始し35日で漸減

重症

mPSL 5001000 mg3日間PSL3040 mgより漸減


夏型過敏性肺炎の環境改善方法
改築による腐った木の除去,畳替え,寝具やベッドの処分.排水や換気の改善.畳,寝具,衣類は干し,カーテンは洗濯,カーペットは除去.次亜塩素酸ナトリウム,エチルエーテル,ヒビテン消毒.


慢性過敏性肺炎 診断基準
1. 環境誘発あるいは抗原誘発試験で陽性
2. 組織学的に線維化が観察される
3. HRCTで線維化所見とhoneycombが観察される
4. 拘束性障害が1年以上にわたって進行性である
5. 過敏性肺炎と関連した症状が6ヶ月以上続く
6. 当該抗原に対する抗体か、あるいはリンパ球増殖試験が陽性
(1か6)、および(2か3)、および(4か5)の3項目以上で診断.


慢性過敏性肺炎の治療

潜在性発症型

中等症(抗原回避しても増悪):PSL 30 mg/dayで開始

重症(抗原回避しても増悪):mPSL 500 mg3日間で開始

再然症状軽減型

重症の急性過敏性肺炎と同じ



【参考文献】
1. 滝沢 始. 間質性肺炎を究める. メジカルビュー社; 2012.
2. 久保 惠嗣, 藤田 次郎. 間質性肺疾患診療マニュアル. 南江堂; 2010.
3. 菅 守隆.過敏性肺炎. 呼吸器病New Approach 7 間質性肺炎ー びまん性肺疾患.メジカルビュー社; 2002.
4. 職業性呼吸器疾患. 日本胸部臨床. 克誠堂; 2009.


by respiresi | 2015-04-21 23:25 | びまん性肺疾患 | Comments(0)

好酸球性肺炎

c0367011_22501307.jpg
若年者の喫煙歴は,好酸球正常でも急性好酸球性肺炎を疑う.好酸球増加と末梢の浸潤影を見たら慢性好酸球性肺炎を疑う.

急性好酸球性肺炎(AEP:acute eosinophilic pneumonia)
30歳以下,喫煙後1ヶ月以内の発症が多い.末梢血好酸球増多はないこともある.発熱,呼吸困難,両側浸潤影など.治療はステロイドで反応性良好だが喫煙で再発あり.CEPに移行することはない.

急性好酸球性肺炎の診断基準
1) 7日以内の急性経過
2) room airでPaO2 60mmHg以下
3) 胸部X線で両側びまん性浸潤陰影
4) BALFの好酸球が25%以上
5) 先行する肺を含めた全身性の感染症やアトピー歴がない
6) ステロイドが著効する
7) 治療終了後に再発

急性好酸球性肺炎の治療


軽症

PSL 4060mg 以降漸減

重症(呼吸不全あり)

mPSL 5001000 mg3日間後PSL 4060 mg 以降漸減


慢性好酸球性肺炎(CEP:chronic eosinophilic pneumonia)
30~40歳代の女性に多い.アトピー,アレルギー性鼻炎,喘息などアレルギー疾患の合併が多い.発熱,呼吸困難,両側浸潤影(特に肺水腫のネガ像)など.治療はPSL 40 mg/day p.o 2週後より漸減し6カ月以内に漸減中止.反応性良好だがステロイド漸減での再発が50%.


by respiresi | 2015-04-21 22:51 | びまん性肺疾患 | Comments(0)

稀なびまん性肺疾患

c0367011_19212513.jpg

肺胞蛋白症(PAP:Pulmonary alveolar proteinosis)
無症状のcrazy pavingを見たら肺胞蛋白症を疑う.マクロファージの機能障害によりサーファクタント由来の物質が肺胞に異常貯留する.抗GM-CSF抗体陽性の自己免疫性(IPAP: idiopathic pulmonary alveolar proteinosis)と血液疾患などの続発性(SPAP: secondary pulmonary alveolar proteinosis)がある.無症状や労作時呼吸困難など.治療は全肺洗浄やムコソルバン.
c0367011_22401327.jpg

診断基準
以下の3項目を満たす。
1. 画像所見:肺高分解能CT撮影で地図状のスリガラス様陰影を呈する
2. 病理・細胞学的所見:下のa項またはb項を満たす
a. 肺生検で肺胞蛋白症を支持する所見がみられる
b. BALFで白濁の外観を呈し,光顕で顆粒状の外観を呈する好酸性,無構造物質の沈着や泡沫マクロファージ(foamy macrophage)がみられる
3. 血清学的所見:血清中の抗GM-CSF抗体が陽性

肺胞微石症
常染色体劣勢遺伝.無症状,咳,呼吸困難など.血清Ca正常.原因不明の肺胞内の微石形成.治療は肺移植.

Langerhans細胞組織球症(LCH:Langerhans cell histiocytosis)
若年の上葉優位の多発嚢胞,粒状影を見たらLangerhans細胞組織球症を疑う.Langerhans細胞の増殖と臓器浸潤の疾患.尿崩症や骨病変など.喫煙との関連あり.診断の目安は,
・ CTで上葉優位の網状粒状影,薄壁小輪状影,浸潤影
・ 肺生検でS-100蛋白,Langerhans細胞,好酸球やリンパ球を含む肉芽腫
・ BALFでLangerhans細胞が5%以上(CD1a≧5%)
治療方針は禁煙などだが確立していない.

リンパ脈管筋腫症(LAM:Lymphangioleiomyomatosis)
若年女性の気胸,非喫煙者の肺気腫を見たらリンパ脈管筋腫症を疑う.労作時呼吸苦,血痰,繰り返す気胸,腎血管筋脂肪腫など.結節性硬化症での合併あり.
診断の目安は,
・ CTで多数の薄壁嚢胞
・ 肺生検,乳糜胸水でLAM細胞
・ 腹水,腎血管筋脂肪腫など腹部スクリーニングも必要
治療方針は対症療法,mTOR阻害薬のラパリムスや肺移植など.

気管・気管支・肺アミロイドーシス
気管内の黄白色の結節,気道狭窄,肺野結節,小粒状影などを呈する.診断は生検でアミロイド蛋白を証明する.気道狭窄にはステントやレーザー治療など.アミロイドーシスに特異的な所見は少ないため,生検で初めて診断がつくことも多い.

キャッスルマン病(Castleman's disease)
発熱,倦怠感,高ガンマグロブリン血症,CRP高値,IL-6高値.多発リンパ節腫脹,アミロイドーシス合併など.腎障害,神経障害,間質性肺炎の合併あり.

【参考文献】
1. 三森 明夫. 膠原病診療ノート 第3版.日本医事新報社; 2013.
2. 宮坂 信之. 膠原病の肺合併症診療マニュアル. 医薬ジャーナル; 2012.
3. 徳田 均. RAの呼吸器合併症はこう診る!こう治す!. 先端医学社; 2013.
4. IgG4関連疾患包括診断基準2011. 日本内科学会雑誌. 2012; 101: 795-804.
5. サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き. 2006. http://www.jssog.com/papers/2006-15.pdf
6. 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会. サルコイドーシスとその他の肉芽腫性疾患. 克誠堂; 2006.
7. 日本呼吸器学会. 生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き; 克誠堂; 2014.
8. 田澤 立之. 続発性肺胞蛋白症. 呼吸; 33: 594-8, 2014.
9. 高橋 和久, 児玉 祐三. EBMを活かす呼吸器診療. メジカルビュー社; 2015.




by respiresi | 2015-04-21 22:40 | びまん性肺疾患 | Comments(0)

サルコイドーシス

c0367011_22363504.jpg
無症状の粒状影,両側肺門リンパ節腫大を見たらサルコイドーシスを疑う.
眼科・循環器科・皮膚科などと連携しながら全身検索を行う.重症度によっては医療給付の対象となるので特定疾患の申請を行う.

特殊なサルコイドーシスには別名がある
Heerfordt症候群:ぶどう膜炎、耳下腺腫脹、顔面神経麻痺、微熱
Lofgren症候群:結節性紅斑、関節炎、BHLを認めるサルコイドーシス


(著作権の関係で図はサルコイドーシスの診断基準と診断の手引き. 2006. http://www.jssog.com/papers/2006-15.pdf を参照)


1. 組織診断群
一臓器に組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め,かつ,以下の1)~3)のいずれかの所見がみられる場合を組織診断群とする.
1) 他の臓器に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認める.
2) 他の臓器で「サルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見」(診断の手引き参照)がある.
3) 全身反応を示す検査所見の6項目中2項目以上を認める.
1) 両側肺門リンパ節腫脹
2) 血清ACE活性高値
3) ツベルクリン反応陰性
4) Gaシンチで著明な集積所見
5) BALFでリンパ球増加またはCD4/CD8比高値
6) 血清あるいは尿中カルシウム高値
2.臨床診断群
組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫は証明されていないが,2つ以上の臓器において「サルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見」(診断の手引き参照)に相当する所見があり,かつ,「全身反応を示す検査所見」の6項目中2項目以上を認めた場合を臨床診断群とする.

呼吸器系病変を強く示唆する臨床所見
1)両側肺門リンパ節腫脹(BHL: bilateral hilar lymphadenopathy)を認める場合.
2)両側肺門リンパ節腫脹(BHL)は認めないが,表2のいずれかの肺病変所見を認める場合

胸部X線上の病期分類
他の疾患と異なり,Stageが上がるほど病気が進むわけではない
Stage 0 正常
Stage 1 BHL
Stage 2 BHL+肺陰影
Stage 3 肺陰影のみ
Stage 4 肺線維化

c0367011_22374335.jpg
c0367011_22374009.jpg

サルコイドーシスの治療
ステロイド全身投与の適応は,心病変,神経病変,局所治療抵抗性の眼病変,高Ca血症,広範な肺病変で自覚症状や呼吸機能低下がある場合.診断基準を満たさない場合や,軽症例は経過観察.
PSL 0.5~1 mg/kg/dayを1ヶ月継続し,5~10 mg/4~8週ずつ漸減.再発が40%.MTXを併用することもある.

サルコイド反応(sarcoid reaction)
癌周囲や,その癌の所属リンパ節に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を形成する反応.様々な癌で起こりうる.


by respiresi | 2015-04-21 22:37 | びまん性肺疾患 | Comments(0)

全身性疾患によるびまん性肺疾患

c0367011_22303743.jpg

特に重症のとき,肺炎球菌肺炎,レジオネラ肺炎,ニューモシスチス肺炎,MTX肺障害,CVD-IP急性増悪,急性ループス肺臓炎,びまん性肺胞出血,RPIP(rapidly progressive interstitial pneumonia)などを鑑別する. 

呼吸器科が知っておくと便利なこと
・ MTXは一般細菌への免疫抑制のエビデンスはないが,結核の場合は中止してステロイドは増量する.
・ リウマチによる気管支拡張症は,リウマチ加療を減らすと増悪することがある


びまん性肺胞出血(DAH:diffuse alveolar hemorrage)
BALFのヘモジデリン貪食マクロファージは肺胞出血を疑う.原因は感染症(細菌,EBウイルス,真菌,抗酸菌),薬剤性,膠原病など.

【まずコレ】

採血(一般,生化学,KL-6SP-D,凝固),胸部XP,動脈血ガス,HRCT ECG,心エコー,BNP,血培,β-Dグルカン,アスペルギルス抗原,クリプトコックス抗原,IGRAMAC抗体,IGRAMAC抗体,CEACYFRAProGRP

膠原病の問診,ANAANCARFMMP-3,抗GBMCCP抗体

【さらに精査するとき】

造影CT,気管支鏡(BALTBLB),VATS,喀痰細胞診,抗SScRNPSS-ASS-BSmDNA・セントロメア・ARS抗体,CMV抗原



膠原病に伴う間質性肺炎(CVD-IP:collagen vascular diseases-IP),肺病変優位の膠原病(lung-dominant CTD)
PM/DMで抗Jo-1抗体陽性は慢性経過が多く,抗CADM140抗体陽性例は急性/亜急性が多い.
SScは慢性型が多く,抗トポイソメラーゼ抗体陽性で間質性肺炎が多い.抗Scl-70抗体陽性で間質性肺炎が多い.

c0367011_22314047.jpg

抗ARS抗体
抗Jo-1抗体など5種類の自己抗体を測定できる.

CADM:clinically amyopathic DM
抗CADM140抗体陽性と急速進行性間質性肺炎(RPIP:rapidly progressive interstitial pneumonia)が特徴.抗Jo-1抗体陰性でCK上昇もなく皮疹のみ.早期からステロイドパルスと免疫抑制剤が提唱されている.

顕微鏡的多発血管炎(MPA:microscopic polyantigitis)
MPAを疑うポイントは,肺胞出血や間質性肺炎,急速進行性糸球体腎炎,全身症状(紫斑,皮下出血,消化管出血,多発性神経炎),MPO-ANCA陽性(感度70%特異度90%).詳細は厚生労働省のプロトコールを参照.

Granulomatosis with polyangiitis (GPA)
旧称はWegener肉芽腫症で,多発血管炎性肉芽腫症に名称が替わった.疑うポイントは,
・上気道(E)の症状
鼻(膿性鼻漏,出血,鞍鼻),眼(眼痛,視力低下,眼球突出),耳(中耳炎),口腔・咽頭痛(潰瘍,嗄声,気道閉塞)
・肺(L)の症状
血痰,咳嗽,呼吸困難
・腎(K)の症状
血尿,蛋白尿,急速に進行する腎不全,浮腫,高血圧
・血管炎による症状
全身症状:発熱(38℃以上,2 週間以上),体重減少(6 カ月以内に6 ㎏以上)
臓器症状:紫斑,多関節炎(痛),上強膜炎,多発性神経炎,虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞),消化管出血(吐血・下血),胸膜炎
・PR-3 ANCA陽性(感度70~95%,特異度95%)

EGPA(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis)
旧称はChurg-Strauss 症候群で,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に名称が替わった.疑うポイントは,MPO-ANCA陽性(感度40%),難治性の喘息,全身症状(紫斑,皮下出血,消化管出血,多発単神経炎,心障害).

Goodpasture症候群
Goodpasture症候群を疑うポイントは,抗GBM抗体陽性(感度90%),血痰,肺胞出血,血尿,蛋白尿,無尿.
治療は,mPSL 1000 mgを3日間後PSL 60 mg 以降漸減.免疫抑制剤を併用.

IgG4関連肺疾患
IgG4関連肺疾患を疑うポイントは,γグロブリン血症(2.0 g/dl),高IgG血症(呼吸器病変ありでは平均3900 mg/dl),画像で腫瘤影・浸潤影・間質影・肺門リンパ節腫大,高IgE血症,sIL-2R高値,KL-6正常.他臓器の症状は涙腺炎,唾液腺炎,閉塞性黄疸,自己免疫性膵炎,水腎症,Mikulicz病など.

臨床診断基準は
1. 臨床的に単一または複数臓器に特徴的なびまん性あるいは限局性腫大,腫瘤,結節,肥厚性病変
2. 高IgG4血症(135 mg/dl以上)
3. 病理組織学的に以下の2つを認める
  ① 著明なリンパ球,形質細胞の浸潤と線維化
  ② IgG4/IgG陽性細胞比40%以上,かつIgG4陽性形質細胞が10/HPFを超える
1,2,3が確定診断.1,3が準確診群.1,2が疑診群.


by respiresi | 2015-04-21 22:30 | びまん性肺疾患 | Comments(0)

間質性肺炎の増悪

c0367011_21154147.jpg

特発性肺線維症急性増悪
IPFの経過中に1ヶ月以内で,
・ 呼吸困難の増強
・ HRCTで蜂巣肺所見+新たに生じたすりガラス陰影・浸潤影
・ 動脈血酸素分圧の低下(同条件でPaO2 10 mmHg)以上で気胸・悪性腫瘍・肺塞栓や心不全を除外.

【まずコレ】

採血(一般,生化学,KL-6SP-D,凝固,血糖),胸部XP,動脈血ガス,HRCT ECG,心エコー,BNP,血培,β-Dグルカン,アスペルギルス抗原,クリプトコックス抗原,CMV抗原,IGRAMAC抗体,CEACYFRAProGRP

(初診の場合は「間質性肺炎の診断・鑑別」の項も参照)

【さらに精査するとき】

造影CTSP-A,気管支鏡(BALTBLB),抗トリコスポロン抗体,CyA血中濃度


治療は,ステロイド,免疫抑制薬併用(AZA,CPAパルス,CsA),シベレスタット,低分子ヘパリン,弾性ストッキングや間欠的空気圧迫(フロートロン),人工呼吸管理,PMX-DHP療法など.

NSIPの急性増悪の公式な基準はなく,IPFの急性増悪に準じる.

[特発性肺線維症急性増悪,急性間質性肺炎:AIP]
1) ステロイドパルス療法
mPSL 1000 mg/day 3日間を反応をみながら1週ごとに1~4回繰り返す.パルス以外の日はPSL 60 mg/day p.oを試みてよい.免疫抑制薬(CsA 2~3 mg/kg/day, or AZA 2~3 mg/kg/day, or CPA 1~2 mg/kg/day)をはじめから併用してよい.
2) ステロイド連日静注法
mPSL 2 mg/kg/day 2週 ⇒ 1 mg/kg/day 1週 ⇒ 0.5 mg/kg/day 1週
1)2)で反応が乏しい場合CPAパルス療法(500 mg/day, 1~2週ごと)を試みてよい

【参考文献】
1. 日本呼吸器学会. 特発性間質性肺炎診断と治療の手引き 改訂第2版. 南江堂; 2011.
2. 久保 惠嗣, 藤田 次郎. 間質性肺疾患診療マニュアル. 南江堂; 2010.
3. 杉山 幸比古. 特発性間質性肺炎の治療と管理. 克誠堂; 2013.
4. 滝沢 始. 間質性肺炎を究める. メジカルビュー社; 2012.
5. びまん性肺疾患研究会. びまん性肺疾患の臨床 第4版. 金芳堂; 2012.
6. Cottin V, Nunes H, Brillet PY, et al. Combines pulmonary fibrosis and emphysema: a distinct underrecognised entity. GERMOP. Eur Respir 2005; 26: 586-93.
7. 病理コア画像http://pathology.or.jp/corepictures2010/
8. Travis WD, Costabel U, Hansell DM, King TE Jr, Lynch DA, Nicholson AG et al. An official American Thoracic Society/European Respiratory Society statement: Update of the international multidisciplinary classification of the idiopathic interstitial pneumonias. Am J Respir Crit Care Med. 2013 ;188:733-748.


by respiresi | 2015-04-21 22:24 | びまん性肺疾患 | Comments(0)

間質性肺炎の治療

ステロイド (他項参照)

c0367011_21130990.jpg
ピレスパ(pirfenidone)
特発性肺線維症が適応の抗線維化剤で,肺活量の低下の抑制作用,無増悪期間生存期間の改善が報告されている.副作用は,50%に日光過敏症(光線対策が必須), 胃部不快感,食欲不振,めまいなど(服用中は車の運転を控える).嘔気予防にPPI,六君子湯,ガスモチン,ドグマチールなど.進行例では効果が少ないとされている.初回600 mg/dayで開始し,1800 mgまで増量する.
軽症例は高価なため導入困難で,身体障害や特定疾患が通る重症度だと効果が出にくいのが悩みどころ

ムコフィリン
特発性肺線維症でムコフィリン吸入を1日2回が試みられている.副作用は少ないが分泌物による気管支閉塞や気管支痙攣の副作用あり.

免疫抑制薬
1) シクロスポリン(CsA:cyclosporin)
ネオーラル 75~100 mg/day (3.0 mg/kg/day),分1~2で投与を開始し,4~7日後にトラフ値(服用前採血,12時間後)が80~120 ng/ml前後(手引きでは100-150 ng/ml), C2(服用2時間後) は800 ng/ml前後になるように調整する.T細胞系を抑制.
Ca拮抗薬,マクロライド系抗菌薬,抗真菌薬では血中濃度上昇.リバロ,クレストール,トラクリアと併用禁忌であり,高脂血症や肺高血圧患者に注意.ゼチーアは併用注意.副作用は,腎機能障害(用量依存性),高血圧,歯肉肥厚,神経症状,多毛症.
2) シクロフォスファミド(CPA:cyclophosphamide)
エンドキサン50 mg/dayから開始し,1~2週ごとに25 mgずつ増量し1~2 mg/kg/dayとする.副作用は,骨髄抑制,出血性膀胱炎,二次発癌.出血性膀胱炎予防に,水分摂取と尿検査を毎月チェックする.出血性膀胱炎が出現時は直ちに投与を中止する.WBC 4000以下またはPLT 10万未満で,半量あるいは中止.
エンドキサンパルス(IVCY)は500 mg/dayを200 ml程度に溶解し3~4週ごとに投与.B細胞系を抑制.
3) アザチオプリン(AZA:azathioprine)
イムラン0.5~2.5 mg/kgで投与.重大な副作用は少ないが,骨髄抑制と肝障害に注意.アロプリノールやACE阻害薬で血中濃度上昇あり.
4) タクロリムス(FK506:tacrolimus:FK506)
プログラフ 2~3 mg/day, 目標トラフ 5~10 ng/ml.腎障害,高血糖,高血圧,消化器症状に注意.T細胞系を抑制.

特発性間質性肺炎の治療方針
基本的な考え方は,
1. 一旦線維化してしまった肺は戻らない
2. 積極的に治療するならステロイドと免疫抑制剤でこれ以上の線維化を防ぐ.ただし副作用が多く,病型によって効きやすいものと,ほとんど効かないものがある.ステロイドの反応性,ステロイドによる有害事象のリスク,線維化の進行から総合的に判断する.

病型別の治療方針
1. 喫煙関連のもの(RB-ILD,DIP)
禁煙.重症例ではステロイドや免疫抑制剤.

2. ステロイドの反応の良いもの(cellular NSIP, OP, BALでリンパ球増加,CTですりガラス影)
経過観察かステロイドのみで治療する
・cellular NSIP 
PSL 0.5 mg/kg/dayで開始し,2~4週で5 mgずつ漸減する.落ち着いたら3~6か月ごとに経過観察.膠原病性間質性肺炎は1~3か月ごとに経過観察.
・OP
PSL 0.5~1mg/kg/dayで1~2ヶ月ののち,5mg/2~4週で漸減.ステロイドに反応不良の場合,免疫抑制薬(CsA 2~3 mg/kg/day, or AZA 2~3 mg/kg/day, or CPA 1~2 mg/kg/day)を併用.
呼吸不全を伴う場合,IPF急性増悪と同様にステロイドパルス療法やステロイド連日静注法を使う.ステロイド中止後は1~3ヶ月ごとに経過観察.


3. ステロイド反応の悪いもの(IPF, fibrotic NSIP, BALで好中球増加,CTで線維化)
経過観察か,ステロイドと免疫抑制剤を併用する.
・IPF

高齢者,副作用のリスクが高い,HRCTで広範囲な蜂巣肺,重篤かつ慢性の呼吸機能障害の場合は経過観察を考慮する.
数ヶ月の経過で自覚症状や画像所見の悪化を認める,BALF中リンパ球の増多を認める,生検でNSIPやOPなどと区別が難しい場合はステロイド+免疫抑制剤を考慮する.150~200 ml/年のVC低下を抑えれば有効と考えられる.
1) PSL 0.5 mg/kg/dayで4週間,その後5mg/2~4週で漸減し5~10 mg/dayまたは20 mg/隔日で維持.CsA,CPAを併用する.
2) PSL 20 mg/ 隔日とCsAを初めから併用し.漸減しない.

[ATS/ERS/JRS/ALATガイドライン 2011]

Strong Yes

安静時低酸素への酸素吸入,肺移植

Weak Yes

急性増悪時のステロイド,無症候性の胃食道逆流の治療、呼吸リハビリ

Weak No

PSLAZANAC,抗凝固, NAC単独,ピルフェニドン,IPFによる呼吸不全への人工呼吸管理,IPFによるPAHの治療

Strong No

ステロイド単独,コルヒチン,CsA,ステロイド+免疫抑制剤,IFNγ-1b,ボセンタン,エタネルセプト

Weak NOはやってはいけない治療ではなく,「全ての患者には勧められないが,一部の患者ではやっても良い」という治療.

日本と海外のガイドラインでは免疫抑制について意見の違いがある.
PSL+AZA+NACは死亡率上昇の報告ありStrong Noになる予定(Idiopathic Pulmonary Fibrosis Clinical Research Network. Prednisone, azathioprine, and N-acetylcysteine for pulmonary fibrosis. NEJM. 2012; 366: 1968-77)


・fibrotic NSIP 
1) PSL 0.5mg/kg/dayで1カ月ののち,5 mg/2~4週で漸減し10 mg/dayまたは20mg隔日で維持.免疫抑制薬(CsA 2~3 mg/kg/day, or AZA 2~3 mg/kg/day, or CPA 1~2 mg/kg/day)を併用.
2) PSL 20 mg/ 隔日で開始し漸減しない.免疫抑制薬(CsA 2~3 mg/kg/day, or AZA 2~3 mg/kg/day, or CPA 1~2 mg/kg/day)を併用.
4. 重症の呼吸不全を呈しステロイド反応の悪いもの(AIP,IPF急性増悪)
ステロイドパルス療法と免疫抑制剤.


by respiresi | 2015-04-21 21:13 | びまん性肺疾患 | Comments(0)