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カテゴリ:感染症( 19 )

日本版敗血症ガイドライン2016

今回のガイドライン改訂の特徴は,
・現時点でのエビデンスや費用対効果などの論文をまとめ,有識者で投票を行っており透明性のある作り方.
・ガイドラインを裁判に利用しないことなど,ガイドラインそのものについて明記されている.弱い推奨は推奨も非推奨もあまり差がないことがあり,非推奨で書いてあるからといって行っていけないわけではない.意見が分かれるものは推奨度が低いか,結論を出さないという判定にしている.
・かなり現場の医師の裁量権に幅を持たせた書き方

・特徴は,定義がSepsis-3と同じになったこと,EDGTの推奨度が下がったこと,抗菌薬の表がなくなってしまったこと….
・ARDSやせん妄については既存のガイドラインと同じ.DICについては日本血栓止血学会のエキスパートオピニオンと微妙に異なる部分が多い.

敗血症は感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態.

敗血症性ショックは,適切な輸液負荷にも関わらず平均血圧 ≧ 65 mmHgを維持するために循環作動薬を必要とし,かつ血清乳酸値 > 2mmol/L(18 mg/dl)

ICUでは,感染症が疑われSOFAスコアが2点以上の急上昇があれば敗血症と診断.非ICUではqSOFAスコアで2点以上で敗血症を疑い,診断はICUと同様.

SOFAスコア 6項目の合計スコア

0

1

2

3

4

PaO2/FiO2

400

<400

<300

<200

人工呼吸管理下で

<100

人工呼吸管理下で

血小板(×103/μL

150

<150

<100

<50

<20

ビリルビン

(mg/dl)

<1.2

1.2-1.9

2.0-5.9

6-11.9

<12.0

循環

MAP

70 mmHg

MAP

70 mmHg

ドパミン≦5γ

または ドブタミン

ドパミン≦5γ

または

エピネフリン≦0.1γ

または

ノルエピネフリン≦0.1γ

ドパミン≦15γ または

エピネフリン>0.1γ

または

ノルエピネフリン>0.1γ

GCS

15

13-14

10-12

6-9

6

Cre

尿量

1.2

1.2-1.9

2.0-3.4

3.5-4.9

500

5.0

200

GCS(Glasgow Coma Scale)

開眼(Eye opening)E

4点:自発的に 3点:呼びかけで

2点:痛み刺激で 1点:開眼しない

言語反応(Verbal response)V

5点:見当識あり 4点:混乱した会話

3点:不適切な単語 2点:意味不明の発声

1点:発語しない

運動反応(Motor response)M

6点:命令に従う 5点:疼痛部位認識

4点:逃避 3点:異常屈曲

2点:伸展 1点:運動しない

qSOFAquick SOFA

・呼吸数 ≧ 22 /min

・意識変容

SBP 100 mmHg


日本版敗血症ガイドラインの概要

診断補助としてプロカルシトニン(PCT),プレセプシン(P-SEP).IL-6は日常的には評価しない.

抗菌薬投与前に血培(23セット),各種培養検体を採取.画像診断,感染巣が不明な場合の全身造影CT

有効な抗菌薬を1時間以内に開始.経験的治療の抗菌薬を選ぶ際にグラム染色を参考に.経験的抗菌薬治療ではGNR感染症を念頭においたルーチンの抗菌薬の併用療法はしない.βラクタム薬の持続投与または投与時間の延長は行わない.de-escalationを実施.PCTを指標とした抗菌薬の中止を行わない.

肺炎で細菌性と非定型のカバーを行うこととは別です

血流感染が疑われた場合に限り,血管カテーテルを早期に抜去.

侵襲性カンジダ症の複数のリスク因子があれば抗カンジダ薬を投与.

免疫グロブリン(IVIG)は明確な推奨の提示なし.

初期蘇生にEGDT(中心静脈圧812 mmHg, 平均動脈圧65 mmHg以上を目標に,大量輸液と血管収縮薬を中心とした蘇生で尿量0.5 ml/kg/h以上,中心静脈酸素飽和度70%以上を6時間以内に達成する)を実施しない.血管内容量減少のある場合の初期輸液は細胞外液を30 ml/kg以上投与.

エコーを用いた心機能評価

初期蘇生に人工膠質液を投与しない.初期蘇生における標準的輸液としてアルブミンを用いない.大量の晶質液を必要とする場合や低アルブミン血症がある場合のアルブミン製剤.

初期蘇生に乳酸値を用いた経時的な評価.初期蘇生の指標としてScvO2か乳酸クリアランス.

初期輸液に反応しない敗血症性ショックに対して第1選択薬としてノルアドレナリン.十分な輸液とノルアドレナリンでも循環動態が維持困難な場合のアドレナリン・バソプレシン.心機能低下ではドブタミン.

初期輸液と循環作動薬に反応しない敗血症性ショックに,ショックの離脱目的で低用量ステロイド.ステロイド投与はショック発生6時間以内.ハイドロコルチゾン300 mg/day以下で最長7日間程度.ハイドロコルチゾン代替はmPSL.敗血症性ショックから回復した場合はステロイドを投与すべきではない.

敗血症性AKIに対する血液浄化療法は,高度な代謝性アシドーシス,高K血症や溢水など緊急導入が必要な場合を除き,早期導入は行わない.循環動態が安定していれば持続・間欠のどちらでも良く,不安定なら持続.敗血症性ショックに標準治療としてPMX-DHPを実施しない.敗血症性AKIの予防及び治療を目的としたフロセミド・ドパミン・ANP投与は行わない.体液過剰に対するフロセミド使用を否定するものではない.

ICU管理を要する敗血症では静脈栄養より経腸栄養.発症後数日のうちに経口摂取で十分な量のエネルギーを摂取できない見込みであれば,48時間以内に経腸栄養を開始.敗血症発症以前に栄養障害がない場合は,1週間程度はエネルギー消費量に見合う量を投与しない.栄養障害がある場合には投与量を制限しないが,Refeeding syndromeに注意する.発症以前に栄養障害がなく入院1週間以内に経腸栄養が開始できている場合は入院1週間以内の静脈栄養を行わない.発症以前に栄養障害があるか,入院1週間以内に経腸栄養が開始できない場合は経静脈栄養を開始,ただし設定エネルギー量の100%投与は行わず,至適投与量は不明.

過剰栄養は回避するという意味です

144~180 mg/dlを目標血糖値にインスリン治療.血糖測定は毛細血管を用いた簡易血糖測定ではなく,動脈血・静脈血を用いた簡易血糖測定か動脈血液ガス.

血糖測定はできるだけ正確な方法で

敗血症性ショックの初期蘇生において赤血球輸血はHb 7g/dl未満で開始.出血傾向がなく外科的処置も要しない場合,凝固異常値を補正する目的では新鮮凍結血漿の投与は行わない.出血傾向が出現した場合や外科的処置が必要な場合は「血液製剤の使用指針」に沿って血小板輸血.

頻脈・貧呼吸・苦痛など発熱に伴う生体反応が問題となっていなければ,ルーチンでは解熱療法を実施しない.低体温に伴う心収縮脳低下・心拡張脳低下・凝固異常などの合併症があれば,循環動態の安定化に配慮して復温.

DVT予防として,リスクレベルに応じて抗凝固療法・弾性ストッキング・間欠的空気圧迫法を行う.

人工呼吸器については,「ARDSガイドライン2016」に準じる.

鎮痛・鎮静・せん妄管理は「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」に準じる.


http://www.jsicm.org/haiketu2016senkou.html

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by respiresi | 2017-01-07 08:30 | 感染症 | Comments(0)

血液培養

穿刺部の皮膚を,70%イソプロピルアルコールに続き1~2%ヨードチンキ・ヨードフォアで消毒する.ヨードフォアは1.5~2分必要.
1セットあたり20 mlを緊急の場合は1時間未満,安定している場合は1~2時間あけて,2~4セット採取する.
菌血症があっても,血培1セットで陽性となる確率は60%,2セットで80%,3セットで96%.静脈も動脈も検出率同じ.

38度以上にこだわる必要はなく,原因不明の意識障害,血圧低下,代謝性アシドーシス,低体温,白血球異常高値・低値など菌血症を示唆する所見があれば発熱に関係なく採取する.

陽性なら70%以上が菌血症の菌
黄色ブドウ球菌,A・B群レンサ球菌,肺炎球菌,大腸菌,クレブシエラ,エンテロバクター,セラチア,緑膿菌,カンジダ、Proteus, maltophillia, Acinetobacter, インフルエンザ桿菌.
陽性でも80%以上がコンタミの菌
表皮ブドウ球菌, Corynebacterium, Propionibacterium, Bacillus,CNS.

【参考文献】
1. CUMITECH血液培養検査ガイドライン. Ellen Jo Baron et al. 医歯薬出版株式会社; 2007


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by respiresi | 2015-04-19 23:29 | 感染症 | Comments(0)

肺寄生虫症

ガイドライン
2014年に呼吸器学会から感染症のガイドラインが出て寄生虫の記載がある.宮崎大学は寄生虫学に長けていることで有名.
寄生虫抗体スクリーニングは,ウェステルマン肺吸虫症,宮崎肺吸虫症,肝蛭症,肝吸虫症,マンソン孤虫症,有鉤嚢虫症,イヌ糸状虫症,イヌ回虫症,ブタ回虫症,アニサキス症,顎口虫症,糞線虫症が可能.

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【参考文献】
1. 貫和 敏博,杉山 幸比古,門田 淳一.呼吸器疾患最新の治療.南江堂; 2013.
2. 工藤 翔二,中田 紘一郎,永井 厚志,太田 健. 呼吸器専門医テキスト. 南江堂; 2007.
3. 藤田 次郎,門田 淳一.呼吸器感染症のすべて 私の治療のコツ.南江堂; 2009.
4. 日本感染症学会, 日本化学療法学会. 呼吸器感染症治療ガイドライン. 杏林社; 2014.
ウェステルマン肺吸虫症
モクズガニ,アメリカザリガニ摂取.待機宿主のイノシシ摂取.南九州に多い. 胸痛,呼吸苦.気胸,胸水,胸膜炎.痰,便,肺組織の虫卵の検出. praziquante宮崎肺吸虫症サワガニ,上海ガニ摂取.待機宿主のイノシシ摂取. 肺回虫症(イヌ・ブタ・ヒト回虫症) 虫卵の摂取.好酸球性肺炎. 便検査. コンバントリン糞線虫症痰,便の幼虫の検出. ivermectin肺赤痢アメーバ症汚染物の摂取. メトロニダゾール肺包虫症(エキノコックス症) キツネやイヌの排泄物の虫卵を摂取.北海道に多い. 肝切除,albendazoleイヌ糸状虫症蚊で媒介.


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by respiresi | 2015-04-16 22:35 | 感染症 | Comments(0)

肺真菌感染症

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ガイドライン
国内の深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014が簡便で使いやすい.日本感染症学会から出ている呼吸器感染症治療ガイドラインも概ね同じだがCPFGなど新しい薬剤のエビデンスが所々異なる.海外ではIDSAからガイドラインが出ている.

C.albicansはFLCZ(F-FLCZ).
C.glabrata, C.kruseiはF-FLCZが効きにくくキャンディン系.
C.parapsolosisはキャンディン系が効きにくくアゾール系.
Candida,Aspergillusは菌腫により薬剤感受性が異なり,珍しい菌腫が出たら感受性検査を検討.当院の微生物検査室スタッフは相当詳しいので相談してみましょう.


AMPH-B:アムホテリシンB(ファンギゾンシロップ・注),L-AMB(アムビゾーム注)
発熱,腎障害,低K血症,嘔気など副作用が多く注意.ファンギゾンシロップは精製水で希釈し,消化管よりの吸収なく口腔内カンジダに使う.L-AMBはAMPH-Bより副作用が少ないが高価.

FLCZ:フルコナゾール(ジフルカンカプセル,注),F-FLCZ:ホスフルコナゾール(プロジフ注)
軽度の消化器症状や肝障害あり.GFR 20~50 mlで半量,20 ml以下で4分の1に減量.

ITCZ:イトラコナゾール(イトリゾールカプセル・液・注)
経口では腎機能低下での投与量調節不要だが吸収は不安定.液剤は空腹時でカプセルは食直後に.PPI, H2ブロッカーとの併用で吸収低下.GFR 30 ml未満では静注不可.軽度の消化器症状や肝障害あり.

VRCZ:ボリコナゾール(ブイフェンド錠,注)
経口では腎障害による投与量調節不要で吸収率100%だが,静注は腎障害が出るため,Ccr 30 ml/min未満では静注不可.肝障害では4 mg/kg 1日1回に減量.食事で吸収低下あり.肝障害,一過性の視力障害あり.トラフ値は2~4.5 μg/mLに.RFP,RBTと併用禁忌.

5-FC:フルシトシン(アンコチル錠)
肝障害,骨髄抑制,消化器症状あり.

MCZ:ミコナゾール(フロリードゲル,注)
MCFG:ミカファンギン(ファンガード注)
軽度肝障害や消化器症状.
CPFG:カスポファンギン(カンサイダス注)
loading doseが必要.肝障害など.
アトバコン(サムチレール)
有効率はST合剤より落ちるものの,副作用が少ない.発疹など.


単純性肺アスペルギローマ(SPA:simple pulmonary aspergilloma)
血痰,喀血,空洞形成病変(菌球),アスペルギルス抗体陽性,喀痰やBFで検出,炎症反応上昇.
第1選択:外科的切除 
第2選択
・MCFG 150~300 mg/day 1日1回div
・CPFG 50 mg/回1日1回div(初回のみ70 mg/回)
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・VRCZ初日 300 mg/回 その後200 mg/回を1日2回内服
・ITCZ 200 mg/回 1日1~2回内服

慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:chronic progressive pulmonary aspergillosis)
慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA:chronic necrotizing pulmonary aspergillosis)と慢性空洞性肺アスペルギルス症を合わせて慢性進行性肺アスペルギルス症と呼ぶ.血痰,発熱,呼吸苦,咳,アスペルギルス抗原・抗体陽性,空洞の拡大,浸潤影,抗菌薬不応性,喀痰やBFでアスペルギルスが検出,炎症反応上昇.治療期間は2週間以上点滴とし,安定すれば中止,安定しなければ内服で継続.
MCFGのエビデンスレベルが上がった(J Infect. 2010 ;61:410-8.)
第1選択
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・MCFG 150~300 mg/day 1日1回div
第2選択
・ITCZ 400mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div
・L-AMB 2.5~5 mg/kg/day 1日1回div
・CPFG 50 mg/回1日1回div(初回のみ70 mg/回)
維持療法
・VRCZ 200mg/回 1日2回
・ITCZ 200mg/回 1日1~2回

侵襲性肺アスペルギルス症(IPA:Invasive Pulmonary Aspergillosis)
免疫不全,急性の発熱,胸痛,血痰,呼吸苦,胸膜摩擦音,急性に出現した結節影,空洞を伴う浸潤影,胸部CTでhalo サイン(結節状浸潤影とすりガラス影),三日月状陰影,β-Dグルカン陽性(感度65~100%,特異度77~100%),アスペルギルス抗原陽性(カットオフ1.0で感度 65%,特異度 94%),BFで検出,炎症反応上昇.
急激に増悪するため診断未確定でも経験的治療が必要.初期治療は少なくとも6~12週間は必要.
経験的治療 第1選択
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・L-AMB 2.5~5 mg/kg/day 1日1回div
・MCFG 150~300 mg/day 1日1回div
・CPFG 50 mg/回1日1回div(初回のみ70 mg/回)
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div
標的治療 第1選択
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・L-AMB 2.5~5 mg/kg/day 1日1回div
標的治療 第2選択
・MCFG 150~300 mg/day 1日1回div.
・CPFG 50 mg/回1日1回div(初回のみ70 mg/回)
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div
重症例ではMCFG・CPFGは他剤と併用.

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA:allergic bronchopulmonary aspergillosis)
喘息,末梢血好酸球増加,アスペルギルス抗原に対する即時型皮内反応陽性,アスペルギルス沈降抗体陽性,血清IgE高値,肺の浸潤影,中枢型気管支拡張症が特徴.Rosenberg,Patterson,Greenbergerなど複数の診断基準がある.治療はPSL 0.5 mg/kg/日より開始し漸減とITCZを16週以上.

ステロイドを基本とし,以下の抗真菌剤を用いる.
第1選択 ITCZ 200mg/回 1日2回
第2選択 VRCZ初日のみ300mg/回,その後200 mg/回 1日2回内服

口腔カンジダ症oral candidiasis
口腔粘膜の白斑・潰瘍,舌痛,擦過細胞診.特にステロイド使用中は注意. 
第1選択
・FLCZ 100~400mg/day 内服
・ITCZ 200 mg/day 内服
第2選択
・VRCZ 200 mg/回 1日2回内服
・MCFG 100~150 mg/day div
・CPFG 50 mg/day div
・AMPH-Bシロップ 100 mg/ml 1回1~5ml 1日2~4回
・MCZゲル 100 mg/回 1日2~4回

食道カンジダ症
嚥下痛,嚥下困難,胸やけ,胃カメラで白斑.
第1選択
・FLCZ(F-FLCZ)100~400 mg/day divまたは内服(FLCZは 200~800 mg/day 1日1回divを2日間でloading)
・ITCZ 200 mg/day 内服
第2選択
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・MCFG 100~150 mg/day div
・CPFG 50 mg/day div

カンジダ肺炎

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非常に稀.常在菌であり痰から出ても感染とは言えず,生検で診断がつく.免疫抑制の患者で血行性に肺病変をきたすことはある.
痰からカンジダが出ただけでカンジダ肺炎という,勘違いされている例は結構多い.カンジダ肺炎?カンジダ血症と考えて良い.この状態だと,肺生検できる状況にないことがほとんど.

カンジダ血症・播種性カンジダ症
カテーテル感染,抗菌薬不応性の発熱,視力低下,霧視,肝臓多発膿瘍,胆道系酵素↑,カンジダ抗原高値,β-Dグルカン陽性,血液培養で検出,炎症反応上昇.眼内炎合併に注意.
抗原価2倍は有意ではないことが多い.血培からカンジダが出たら,即治療.

標的治療は,
・カテーテル抜去
第1選択
・FLCZ(F-FLCZ)800 mg/day div 2日間の後400 mg/day div,あるいは初期5日間AMPH-B 0.7 mg/kg/dayと併用可.
・MCFG100~150 mg/day 1日1回div
第2選択
・VRCZ初日のみ6mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・L-AMB 2.5 mg/kg/day 1日1回div
・AMPH-B 0.5~1.0 mg/kg/day 1日1回div
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div 

肺クリプトコックス症pulmonary cryptococcosis
無症状,下肺野に結節影(胸膜側に孤立または多発),浸潤影,空洞影,健常者でも発症,クリプトコックス抗原陽性(感度 67%,特異度100%),喀痰やBFで検出.β-Dグルカンは上昇しない.非免疫不全者では髄液検査は必須ではない.治療期間は3カ月~1年間.トリコスポロンとリウマトイド因子で偽陽性あり.
非HIVで髄膜炎なしの場合
第1選択
・FLCZ(F-FLCZ)400 mg/day div(F-FLCZは 800 mg/day 1日1回divを2日間でloading)
またはFLCZ 200~400mg1日1回内服
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回divまたは内服
重症例や第1選択の無効例
・5-FC 100 mg/kg/day内服 を併用
・VRCZ初日のみ300mg/回,その後200 mg/回 1日2回内服
・L-AMB 2.5~6 mg/kg/day 1日1回div
治療期間は,基礎疾患なければ3カ月,基礎疾患があれば6カ月を目安に.

ムーコル症(接合菌症)mucormycosis
著しい免疫不全に発症.肺病変は発熱,咳,CTで斑状陰影・浸潤影・空洞影.β-Dグルカンは上昇しない.VRCZ無効の場合に疑う.
限局性病変は外科的切除.AMPH-B 1 mg/kg/day divまたはL-AMB 5 mg/kg/day div.AMPH-B 2,000 mg(L-AMBなら 10,000 mg)まで投与する.
アスペルギルスは痰から出たら感染が疑わしいです.アスペルギルスを肉眼で見たい人は「石川 雅之. もやしもん1. 講談社: 2005.」を読んで下さい.

ニューモシスチス肺炎(PCP:Pneumocystis pneumonia)
胸部XPで所見がなくてもCTではすりガラス影が見えることがある.β-Dグルカンは23.3 pg/ml(MK法)で感度96%, 特異度88%.喀痰や気管支洗浄液で栄養体のDiff-Quick染色や嚢子のGrocott染色やカリニPCRを提出する.ただし,カリニPCRでは定着だけでも陽性となる.Non-HIVでは菌量が少なく過剰免疫による呼吸不全とされる.BAL感度は40~50%,PCR感度は87%.

Non-HIVでは地図状のすりガラス影. HIVでは嚢胞性変化.

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ステロイド20 mg/day,1ヶ月以上のときは予防投与を行う.
予防投与は
① バクタ 1錠連日or 2錠隔日投与
② ペンタミジン吸入(300 mgを蒸留水に溶いて1ヶ月に1回吸入.生食やTZでは混濁を起こす.気道刺激性と気管攣縮の危険あり,医療者の曝露予防と換気,事前にメプチン吸入を行っておく.)
③ アトバコン1500 mgを1日1回内服
治療は,
① バクタ9~12錠/day(トリメトプリム15~20mg/kg)と,PaO2 <70 mmHg (room air)ならステロイド補助療法を用いる.非HIV症例では14日間治療する.プレドニン経口or点滴で
day 1~5 : PSL 1 mg/kg/day または 80 mg/dayを分2
day 6~10 : PSL 0.5 mg/kg/day または 40 mg/day分1
day 11~15 : PSL 0.25 mg/kg/day または 20 mg/day分1
② バクタが使えないとき,ペンタミジン3~4 mg/kg/day.1日1回(注射用水5 mlに溶かしTZまたは生食100 mlに希釈)だが,高血糖,膵壊死など副作用が多い.
③ アトバコン750 mgを1日2回21日間

トリコスポロンTrichosporon
好中球減少や血管内カテーテル留置患者に発症.Β-Dグルカン,クリプトコックス抗原陽性あり.
第1選択
・VRCZ初日のみ6mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
第2選択
・FLCZ(F-FLCZ)400 mg/day div(FLCZは 800 mg/day 1日1回divを2日間でloading)
・L-AMB 2.5~5 mg/kg/day 1日1回div
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div 

【参考文献】
1. 深在性真菌症のガイドライン作成委員会. 深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014.協和企画; 2014.
2. 細川 直登,前崎 繁文,大曲 貴夫.臨床感染症ブックレット2巻 エンピリック治療の抗菌薬,確定治療の抗菌薬を選択する. 文光堂; 2010.
3. 日本臨床腫瘍学会.発熱性好中球減少症診療(FN)ガイドライン. 南江堂; 2012.
4. 日本感染症学会, 日本化学療法学会. 呼吸器感染症治療ガイドライン. 杏林社; 2014.
5. 河野 茂. 深在性真菌症Q&A 改訂第3版. 医薬ジャーナル社; 2007.


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by respiresi | 2015-04-16 22:32 | 感染症 | Comments(0)

非結核性抗酸菌症(NTM:non tuberculous mycobacteria)

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ガイドライン
国内の診療指針のほか,海外ではATS/ADSAガイドラインがありAZMが選択肢に入っている.リウマチとの合併が多く呼吸器科学会から生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引きが出ている.治療適応や診断基準が誤解されやすい疾患.

Mycobacterium avium, Mycobacterium intracellulare を合わせてMAC症.

NTM診断基準
以下のA,Bを満たす.
A.臨床的基準(以下の2項目を満たす)
1.胸部画像所見(HRCTを含む)で,結節性陰影,小結節性陰影や分枝状陰影の散布,均等性陰影,空洞性陰影,気管支または細気管支拡張所見のいずれかを示す.但し,先行肺疾患による陰影が既にある場合は,この限りではない。
 2.他の疾患を除外できる。
B.細菌学的基準(以下のいずれか1項目を満たす)
 1.2回以上の異なった喀痰検体での培養陽性
 2.1回以上の気管支洗浄液での培養陽性
 3.経気管支肺生検または肺生検組織の場合は,抗酸菌症に合致する組織学的所見と同時に組織,または気管支洗浄液,または喀痰での1回以上の培養陽性
 4.稀な菌種や環境から高頻度に分離される菌種の場合は,検体種類を問わず2回以上の培養陽性と菌種同定検査を原則とし,専門家の見解を必要とする。
NTMは環境に常在するので,1回の痰培だけではNTM症と診断できない

MAC抗体
抗GPL-core IgA抗体.0.7 U/mlがカットオフで感度84%,特異度100%.免疫抑制状態では感度が低下する.病勢との相関は,ある場合いとない場合がある.今後は診断基準に使えるか期待されている.

M. kansasiiの治療
INH 5 mg/kg(最大300 mg),RFP 10 mg/kg(最大600 mg),EB 15 mg/kg(最大750 mg)の3剤で排菌陰性化後1年間加療.治癒が期待できる.
RFP,EB,INH,SM ,CAM,LVFX,STは基本的に有効.感受性はRFPが確立している.

迅速発育菌の治療
M. abscessus
CAM,AMK,IPMなどを多剤併用して1~2ヶ月で内服に切り替えるが,治療は難しい.限局性の肺病変の場合,肺切除も検討.
M. fortuitum
マクロライド,キノロン,MINO,AMK,IPM,STが有効.感受性を確認し,有効薬剤を2剤以上,排菌停止から1年以上で治癒が期待できる.

MAC症の治療
RFP 10 mg/kg(最大600 mg) , EB 15 mg/kg(最大750 mg), CAM 600~800 mg(15~20mg/kg), 週2~3回SMまたはKM 15 mg/kg以下(最大1000 mg).RBT 300 mg⇔ RFP 600 mg換算で使用しても良い.
・ 治療開始時期に定まった基準はない.
・ 薬剤感受性検査はCAM以外は確立していない.
・ CAMのMIC 4μg/ml以下を感受性,32μg/ml以上を耐性.CAM耐性の場合,CAM は中止する.
・ 投与期間は排菌陰性化後1年間までが目安だが,エビデンスはない.
・ リウマチ患者でも生物学的製剤が加わっていても治療は同一で,治療期間の定説はないが,排菌陰性化後1年間あるいは治療経過が難渋する場合は6~12ヶ月延長.
・ CAM単剤は数ヶ月以内に耐性菌が出るため行ってはならない.70才以上では1週ごとに1剤追加のように,3剤を同時に開始することは避ける.
・ 小結節・気管支拡張型よりも線維・空洞型の方が予後が悪い.
・ NTMと確定診断されている場合は抗TNF-α抗体は原則禁忌.ただし,最近の呼吸器科学会では「菌腫がMACで,X線病型が結節・気管支拡張型であり,肺の既存病変が軽度、全身状態が良好,抗NTM治療が長期にわたって継続でき,治療反応性が良好であることが確認され,またRAの疾患活動性が高度で生物学的製剤の投与を強く必要とする場合に限り,リスク・ベネフィットバランスを十分検討したうえで生物学的製剤の会誌を考慮しても良い.その場合呼吸器専門医の併診が望ましい.線維空洞型では禁忌である.疑い例については,より柔軟な対応で良い.」と慎重な見解がある.

※ 当院では外注のブロスミックNTMで感受性検査が可能


外科治療
病状コントロール目的で,根治ではない.
外科治療(肺切除術)の適応
・ 化学療法でも排菌が停止しない
・ 排菌が停止しても空洞性病巣や気管支拡張病変が残存
・喀血,繰り返す気道感染,肺アスペルギルス症の混合感染例など
・70 歳程度までが外科治療の対象

術前3~6カ月程度の化学療法は行われるべき.術後化学療法は少なくとも1年以上.

【参考文献】
1. 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会: 肺非結核性抗酸菌症診断に関する指針-2008年. 結核 83: 525-526.2008
2. 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会: 肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解-2012年改定. 結核 87: 83-86.
3. 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会:肺非結核性抗酸菌症に対する外科治療の指針. 結核 83: 527-528.2008
4. An Official ATS/IDSA Statement: Diagnosis,Treatment, and Prevention of Nontuberculous Mycobacterial DiseasesAm. Respir Crit Care Med 175: 367-416,2007
5. 佐々木 結花, 小川 賢二. 非結核性抗酸菌症の臨床. 新興医学出版社; 2010.
6. 肺MAC症診療up to date. 倉島 篤行, 小川 賢二. 南江堂; 2013.
7. 日本呼吸器学会. 生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き; 克誠堂; 2014.


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by respiresi | 2015-04-16 22:07 | 感染症 | Comments(0)

潜在性結核感染症(LTBI:latent tuberculosis infection)

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結核に暴露されても感染するのは半数程度で,そのうち一次結核,二時結核を起こすのが1割程度.明らかな臨床的症状を有さず、細菌学的検査や胸部画像検査(胸部X線・CTなど)でも結核を示唆する所見はないが、結核に感染していること自体が治療を必要とする状態.

1. 感染性患者との接触
結核接触者検診で,結核(確定例)の臨床的特徴や画像所見等を認めないものの,IGRAやツ反から結核感染が明らか,または強く疑われる場合はLTBIとしての治療を検討する.
感染性の高い結核患者との接触歴があるハイリスク接触者においては,患者との最終接触後早期のツ反やIGRAが陰性でも,LTBIとしての治療を検討するべき.

2. 免疫不全・免疫抑制
日本結核病学会の潜在性結核感染症治療指針に相対危険度と勧告レベルが記載され,相対危険度4以上では積極的なLTBI治療が勧められている.


潜在性結核感染症治療指針ではINH9ヶ月が第1で,INH6ヶ月やRFP4ヶ月が代替方法とされている.発病防止効果はINH 6カ月で50~70%,12カ月で90%程度.INHが使用できない場合やINH耐性菌の場合にRFPを使用.

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結核既往を見たら,抗結核薬の治療をしたか確認を.薬がなくて人工気胸・胸郭形成術をしていた時代もあり,結核再燃のリスクがあります.

【参考文献】
1. 日本結核病学会. 潜在性結核感染症治療指針. 結核. 2013; 88: 497-512.
2. 冨岡 洋海. 結核.医学書院; 2006.
3. 日山 亨, 日山 恵美, 吉原 正治. 内科医のための訴訟事例から学ぶ日常診療のクリティカルポイント. 新興医学出版社; 2010.
4. 感染症法に基づく結核の接触者健康診断の手引き第4版. http://www.jata.or.jp/rit/rj/2010sessyokusya4.pdf
5. 日本呼吸器学会. 生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き; 克誠堂; 2014.



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by respiresi | 2015-04-15 23:34 | 感染症 | Comments(0)

肺結核(TB: pulmonary tuberculosis)2

粟粒結核 miliary tuberculosis
結核菌の血行性播種.喀痰塗抹陽性は46~62%,骨髄生検・骨髄穿刺陽性は33~86%,尿塗抹陽性は14%,肝生検67~100%,肺生検50~100%.免疫能低下例ではQFT陽性率は58%程度.
治療は肺結核と同様だが死亡率6.7~24%と高め.

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抗結核薬
イソニアジド(INH) イスコチン
副作用は,肝障害,末梢神経障害,過敏症(インフルエンザ様症状),間質性肺炎.末梢神経障害が出た場合VitB6(ピドキサール)100~200 mgを内服する.標準量5 mg/kg/day(最大300 mg/body/dayまで)
リファンピジン(RFP) リファジン
副作用は,胃腸障害,肝障害,過敏症(インフルエンザ様症状),発疹,血小板減少.尿や便が赤くなる.標準量10 mg/kg/day(最大600 mg/body/dayまで).食前投与の方が血中濃度が上がりやすいが,食後投与でも効果に問題はない.ステロイドや免疫抑制剤の作用減弱ありステロイド倍量投与を検討する.抗HIV薬と相互作用がある場合はリファブチンを選ぶ.
リファブチン(RBT) ミコブティン
副作用はぶどう膜炎,白血球減少症,尿変色,悪心,発疹,嘔吐,発熱,肝機能異常,腹痛,貧血,血小板減少症,下痢,ALP増加など.150~300 mgを内服.CAM併用で血中濃度上昇あり,CAM併用時は150 mgから開始し,6ヶ月後に300 mgまで増量する.
ピラジナミド(PZA) ピラマイド
副作用は,肝障害,高尿酸血症.高尿酸血症は服薬中止後改善し,痛風合併しない限り治療不要.2週間に1回の肝機能検査.標準量25 mg/kg/day(最大1500 mg/body/dayまで).
エタンブトール(EB) エブトール
副作用は,球後視神経炎.視力障害は一般的に可逆性だが稀に不可逆性傷害あり.眼科紹介.標準量15 mg/kg/day(最大750 mg/body/dayまで).
ストレプトマイシン(SM) ストレプトマイシン
副作用は,前庭神経障害(めまい),聴器毒性,腎障害.聴力障害は不可逆性.耳鼻科紹介.標準量15 mg/kg/day(最大750 mg/body/dayまで).
デラマニド  デルティバ
多剤耐性結核に対しての新薬剤.副作用はQT.延長など.

エタンブトールによる視力障害の発見が遅れて失明した事件や,難聴患者にストレプトマイシンを使い完全に聴力を失った事件で,病院側敗訴になった事例がある(神戸地裁平成3年4月22日判決, 判決タイムズ770号236ページ).必ず各科のフォローの元で使用を.

初回肺結核の治療
初回肺結核はINH,RFP,PZA,EB(またはSM)の4剤で治療を開始する.耐性化を防ぐため必ず多剤併用し,最低でも6ヶ月間の治療を要する.
A法: RFP+INH+PZA+SM(またはEB)で2ヶ月治療後
RFP+INH(+EB)で4カ月治療
B法: RFP+INH+SM(またはEB)で2ヶ月治療後
RFP+INHで7カ月治療
原則としてA法で,PZA投与不可の場合(肝硬変,C型慢性肝炎などの肝障害合併患者,80歳以上の高齢者)にはB法を検討.
"2HREZ"とは,2ヶ月IN"H","R"FP,"E"B,P"Z"Aを使うことを指す


初期悪化(paradoxical response)
肺結核の治療例の2~30%で結核治療開始により病勢の増悪がみられる.細胞性免疫の回復によると考えられている.

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抗結核薬の副作用への対応
肝機能検査は初期2ヶ月は2週おき,以降月1回,末梢血は月1回,EB使用中は眼科で月1回のfollowを最低限行う.

[肝障害]:自覚症状がなくAST・ALTが基準値上限の5倍以下の場合は注意しながら治療継続.自覚症状がなくても5倍以上なら抗結核薬全中止.自覚症状ありAST・ALTが基準値上限の3倍以上の場合は抗結核薬全中止.
[血小板減少]:Plt 5万以下でRFP中止

結核発生届
結核は感染症法による2類感染症であり,診断したら直ちに最寄りの保健所に届け出ないといけない.


日本結核病学会病型分類

日本結核病学会. 新しい結核用語辞典. http://www.kekkaku.gr.jp/books/pdf/jiten.pdf を参照

結核の接触者健康診断
詳細は
感染症法に基づく結核の接触者健康診断の手引き 改訂第5版. http://www.phcd.jp/02/kenkyu/kouseiroudou/pdf/tb_H25_tmp02.pdf を参照
STEP 1. 感染性の評価
・感染源になりうる結核は?
肺結核・喉頭結核,および喀痰検査で結核菌が検出された結核性胸膜炎・粟粒結核.
・感染性の高さは?
空洞あり,喀痰塗抹陽性例は感染性が高い
気管支鏡検体や,咽頭ぬぐい液,吸引痰,胃液は結核の診断の有力な根拠となるが,感染性の評価は未確立.

STEP 2. 接触者のリスクを評価
発端となった結核患者(初発患者)が結核を感染させる可能性のある期間(感染性期間)において,その患者と同じ空間にいた者を接触者とする.
患者背景や接触が濃厚かどうかでリスクを評価していく.
感染性期間は,症状出現の3ヶ月前が基本.

(1) ハイリスク接触者
乳幼児,免疫不全疾患,コントロール不良の糖尿病,免疫抑制剤(抗TNFーα製剤を含む)やステロイド,臓器移植例,透析患者など
(2) 濃厚接触者
患者の同居家族,あるいは生活や仕事で毎日のように部屋を共有していた者,患者と同じ車に週に数回以上同乗していた者,換気の乏しい狭隘な空間を共有していた者,結核菌飛沫核を吸引しやすい医療行為(結核に対する不十分な感染防護下での気管支鏡,呼吸機能検査,痰の吸引,解剖,結核菌検査等)に従事した者,集団生活施設の入所者など
(3) 非濃厚接触者
濃厚接触者ほどではないが,接触のあった者(数回,初発患者を訪ねていた,週に一回程度,短い時間会っていた,など)

STEP 3. 接触者検診
初発患者との最終接触から2~3ヶ月経過後にIGRA(QFT-3G またはT-SPOT)を行う.LTBIと診断された者には,十分なI.C(治療効果や,肝障害等の副作用)のもとで,適切な治療を行う.

IGRA陽性の場合
無症状病原体保有者で医療が必要な場合は,潜在性結核感染症としての治療を行う.
IGRA判定保留の場合
QFTの場合,「判定保留」は基本的には「陰性」として扱う.ただし対象集団でQFT陽性率が高い場合は「感染あり」として扱う
T-SPOTの場合,再検査.
IGRA陰性の場合
接触者検診は原則不要.ただし,その後発病する場合もある.
IGRA判定不可の場合
再検査.再検査でも「判定不可」の場合はXPで経過観察.

【参考文献】
1. 日本結核病学会. 結核診療ガイドライン(改訂第2版). 南江堂; 2012.
2. 冨岡 洋海. 結核. 医学書院; 2006.
3. 感染症法に基づく結核の接触者健康診断の手引き 改訂第5版. http://www.phcd.jp/02/kenkyu/kouseiroudou/pdf/tb_H25_tmp02.pdf
4. 結核予防会. QFTのQ&Aと使用指針の解説H20年改訂版: 2008.
5. 日本呼吸器学会. 生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き; 克誠堂; 2014.




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by respiresi | 2015-04-15 23:18 | 感染症 | Comments(0)

肺結核(TB: pulmonary tuberculosis)1

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ガイドライン
結核接触者検診の手引きが改訂された.例外や注釈が非常に多いので,診療の際には原本を読むことをお勧めする.

結核は治る病気だが,結核を疑わなければいつまでも診断がつかず,感染を広げてしまう危険性がある.肺に影のある患者は,1回は抗酸菌培養も出した方が良い.
NTM(特にMAC症)は診断がついても抗結核薬か効きにくく,治療が難しい分野.

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肺結核疑いを見たら
STEP 1. 入院が必要か?
感染力のある結核は入院が感染症法により定められている.入院が必要な場合,空気感染対策(陰圧個室に入室し,移動時はサージカルマスク着用・スタッフはN95マスク着用)を行う.
外来のみの場合,自宅待機.

STEP 2. 排菌しているか?
喀痰ガフキーを3日連続で確認する.陰性なら肺結核でも感染性はないので空気感染対策を解除する.陽性ならSTEP3へ.

STEP 3. 結核か?
結核菌遺伝子検査(TB-TRCまたはTB-PCR)を行う.入院例で陽性ならTBとして空気感染対策を継続する.外来例も感染症法ですぐに入院する必要があるため,結核病床のある施設に紹介する.陰性なら空気感染対策を解除する.
※ 対応が分からなかったら医療安全室に相談する.

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抗酸菌塗沫
抗酸菌塗抹陽性だけではTBとNTMを判別できず,培養は8週間かかるためTB-TRCまたはTB-PCRを行う.結核が疑われる患者では3日連続で採痰する.(喀痰塗抹 1回で陽性率64%,3回で91%.PCR 1回で陽性率89%).抗酸菌塗抹陽性でもTB-TRCまたはTB-PCR陰性ならTBではないと考える.塗抹陰性でも核酸増幅検査では感度75~88%,特異度85~100%.

インターフェロンγ遊離試験(IGRA:Interferon-gamma release assay)
結核菌の暴露を受けたT細胞からのIFNを測定する.QFT-3Gは感度89%,特異度98%であり,BCG接種やNTMの影響(M. kansasii, M. marinum, M. szulgai以外)を受けないため診断に有用. 既往の感染と現在の感染を区別することはできない.ESAT-6,CFP-10のいずれかが0.10~0.35 IU/mlの偽陽性(判定保留)は通常は感染していないと判断し,状況証拠で感染を受けている可能性が高い場合は感染と扱う.HIVなどの免疫抑制で陽性コントロールでの反応が弱い場合,判定不能.リウマチ,SLE,ウイルス感染などでNil値が高く陰性コントロールでの反応が高い場合も判定不能.
T-SPOTの方がQFT-3Gよりも感度が高く特異度は低いとされている.

ツベルクリン反応
健常者でも,BCG接種で強陽性となりうるため,補助的な診断にとどまる.サルコイドーシスや免疫不全で陰性化する.前腕内側に皮下注射し,48時間後に発赤を計測する.

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by respiresi | 2015-04-15 23:04 | 感染症 | Comments(0)

免疫不全の肺炎

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好中球減少(血液系悪性腫瘍,抗癌剤使用,薬剤性)の場合.
肺炎の主要微生物はMRSA,クレブシエラ,大腸菌,緑膿菌,ニューモシスチス,サイトメガロ,結核菌,カンジダ,肺アスペルギルス症など.

細胞性免疫不全(HIVでCD4が200/μL以下,ステロイド,免疫抑制剤,放射線治療,抗癌剤,血液系悪性腫瘍,糖尿病,腎不全など)の場合
肺炎の主要微生物はニューモシスチス,結核,NTM,レジオネラ,サイトメガロウイルス,単純ヘルペスウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス,肺クリプトコックス症,ヒストプラズマ,トキソプラズマ,ノカルジアなどHIVでは画像は非典型的となり,リンパ腫やカポジ肉腫との判別困難な場合も多い.

液性免疫不全(CML・多発性骨髄腫など血液系悪性腫瘍,脾摘後,抗CD20抗体使用)の場合.
肺炎の主要微生物は肺炎球菌,インフルエンザ菌,髄膜炎菌など

サイトメガロウイルス肺炎cytomegalovirus pneumonia
免疫不全者の急速に進行する呼吸困難,発熱,低酸素血症,肝障害が特徴.胸部XPは網状影,すりガラス影,浸潤影,小粒状影.網膜炎や胃腸炎の合併あり.CMV抗原5万分の10を陽性とすると感度80%,特異度90%.免疫不全では血清抗体では診断できない.気管支鏡でCMV抗原陽性細胞や核内封入体(owl ‘s eye)を持つ巨細胞を検出する.
治療はガンシクロビル1回5 mg/kgを1日2回点滴を14日間,その後維持療法は1日1回に.副作用は血球減少など.
代替薬のホスカビルは腎障害が出やすく輸液負荷を推奨.
代替薬のバルガンシクロビルは内服のガンシクロビルのプロドラッグ.
抗CMV高力価ガンマグロブリン 1回2.5~5 gを1日1回3日間を併用.


ヘルペス肺炎
特異的な画像所見はなく,すりガラス影や浸潤影.痰・気管支洗浄液の細胞診やPCR陽性,HSV-1 IgM高値で診断する.ゾビラックス5 mg/kg/回を1日3回7日間投与.

水痘帯状疱疹ウイルス肺炎
多発小結節影が特徴で,全身の水疱,VZV-IgMを確認.ゾビラックス5 mg/kg/回を1日3回 7日間投与,免疫グロブリンなど.

【参考文献】
1. 大曲 貴夫, 上田 晃弘, 藤田 崇宏, 岸田 直樹, 荒岡 秀樹, 相野田 祐介. 免疫不全者の呼吸器感染症. 南山堂; 2011.
2. 日本感染症学会, 日本化学療法学会. 呼吸器感染症治療ガイドライン. 杏林社; 2014.


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by respiresi | 2015-04-12 22:46 | 感染症 | Comments(0)

誤嚥性肺炎aspiration pneumonia

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食事時のムセるような顕性誤嚥と,口腔分泌物を気づかずに嚥下する不顕性誤嚥があり,後者では胃瘻や絶食は効果なく,頭位挙上や口腔ケアを行う.

嚥下機能評価や,神経症状があれば虚血性脳疾患の検索.齲歯の治療なども考慮.




治療・予防は頭位挙上,口腔ケア,眠剤中止,ACE阻害薬(タナトリルなど),ガスモチン,シンメトレル,プレタール,半夏厚朴湯,嚥下リハビリ,肺炎球菌ワクチン.

絶食 → 水分トロミ → ゼラチン食 → トロミ食 → 軟菜食 と言語治療士と相談しながら変更する.2週以上は末梢静脈以外の栄養手段を検討.経口摂取中止が6週以下なら経鼻胃管栄養,6週以上なら胃瘻造設やIVHを検討.ADLが良好でリハビリで改善しない場合は嚥下機能改善手術も検討する.胃瘻に誤嚥性肺炎予防のエビデンスはない.

静注で

1選択

2選択

耐性菌リスクなし

SBT/ABPCCMZ

CLDMMND

耐性菌リスクあり, 重症

TAZ/PIPC, IPM/CS, MEPM, BIPM, DRPM

CFPM, CPR

に加え

CLDMMNZ

LVFX, CPFX

に加え

CLDM, MNZSBT/ABPC


(日本感染症学会・日本化学療法学会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. ライフサイエンス出版; 2014. 当院アンチバイオグラム より作成)

【参考文献】
1. 日本感染症学会・日本化学療法学会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. ライフサイエンス出版; 2014.
2. 藤谷 順子,鳥羽 研二. 誤嚥性肺炎 抗菌薬だけに頼らない肺炎治療. 医歯薬出版; 2011.
3. 日本化学療法学会・日本嫌気性菌感染症研究会. 嫌気性菌感染症診断・治療ガイドライン; 2007.
4. 日本耳鼻咽喉科学会. 嚥下障害診療ガイドライン2008年版. 金原出版; 2008.



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by respiresi | 2015-04-12 22:41 | 感染症 | Comments(0)