ピクトグラムでわかる呼吸器内科

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日本版敗血症ガイドライン2016

今回のガイドライン改訂の特徴は,
・現時点でのエビデンスや費用対効果などの論文をまとめ,有識者で投票を行っており透明性のある作り方.
・ガイドラインを裁判に利用しないことなど,ガイドラインそのものについて明記されている.弱い推奨は推奨も非推奨もあまり差がないことがあり,非推奨で書いてあるからといって行っていけないわけではない.意見が分かれるものは推奨度が低いか,結論を出さないという判定にしている.
・かなり現場の医師の裁量権に幅を持たせた書き方

・特徴は,定義がSepsis-3と同じになったこと,EDGTの推奨度が下がったこと,抗菌薬の表がなくなってしまったこと….
・ARDSやせん妄については既存のガイドラインと同じ.DICについては日本血栓止血学会のエキスパートオピニオンと微妙に異なる部分が多い.

敗血症は感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態.

敗血症性ショックは,適切な輸液負荷にも関わらず平均血圧 ≧ 65 mmHgを維持するために循環作動薬を必要とし,かつ血清乳酸値 > 2mmol/L(18 mg/dl)

ICUでは,感染症が疑われSOFAスコアが2点以上の急上昇があれば敗血症と診断.非ICUではqSOFAスコアで2点以上で敗血症を疑い,診断はICUと同様.

SOFAスコア 6項目の合計スコア

0

1

2

3

4

PaO2/FiO2

400

<400

<300

<200

人工呼吸管理下で

<100

人工呼吸管理下で

血小板(×103/μL

150

<150

<100

<50

<20

ビリルビン

(mg/dl)

<1.2

1.2-1.9

2.0-5.9

6-11.9

<12.0

循環

MAP

70 mmHg

MAP

70 mmHg

ドパミン≦5γ

または ドブタミン

ドパミン≦5γ

または

エピネフリン≦0.1γ

または

ノルエピネフリン≦0.1γ

ドパミン≦15γ または

エピネフリン>0.1γ

または

ノルエピネフリン>0.1γ

GCS

15

13-14

10-12

6-9

6

Cre

尿量

1.2

1.2-1.9

2.0-3.4

3.5-4.9

500

5.0

200

GCS(Glasgow Coma Scale)

開眼(Eye opening)E

4点:自発的に 3点:呼びかけで

2点:痛み刺激で 1点:開眼しない

言語反応(Verbal response)V

5点:見当識あり 4点:混乱した会話

3点:不適切な単語 2点:意味不明の発声

1点:発語しない

運動反応(Motor response)M

6点:命令に従う 5点:疼痛部位認識

4点:逃避 3点:異常屈曲

2点:伸展 1点:運動しない

qSOFAquick SOFA

・呼吸数 ≧ 22 /min

・意識変容

SBP 100 mmHg


日本版敗血症ガイドラインの概要

診断補助としてプロカルシトニン(PCT),プレセプシン(P-SEP).IL-6は日常的には評価しない.

抗菌薬投与前に血培(23セット),各種培養検体を採取.画像診断,感染巣が不明な場合の全身造影CT

有効な抗菌薬を1時間以内に開始.経験的治療の抗菌薬を選ぶ際にグラム染色を参考に.経験的抗菌薬治療ではGNR感染症を念頭においたルーチンの抗菌薬の併用療法はしない.βラクタム薬の持続投与または投与時間の延長は行わない.de-escalationを実施.PCTを指標とした抗菌薬の中止を行わない.

肺炎で細菌性と非定型のカバーを行うこととは別です

血流感染が疑われた場合に限り,血管カテーテルを早期に抜去.

侵襲性カンジダ症の複数のリスク因子があれば抗カンジダ薬を投与.

免疫グロブリン(IVIG)は明確な推奨の提示なし.

初期蘇生にEGDT(中心静脈圧812 mmHg, 平均動脈圧65 mmHg以上を目標に,大量輸液と血管収縮薬を中心とした蘇生で尿量0.5 ml/kg/h以上,中心静脈酸素飽和度70%以上を6時間以内に達成する)を実施しない.血管内容量減少のある場合の初期輸液は細胞外液を30 ml/kg以上投与.

エコーを用いた心機能評価

初期蘇生に人工膠質液を投与しない.初期蘇生における標準的輸液としてアルブミンを用いない.大量の晶質液を必要とする場合や低アルブミン血症がある場合のアルブミン製剤.

初期蘇生に乳酸値を用いた経時的な評価.初期蘇生の指標としてScvO2か乳酸クリアランス.

初期輸液に反応しない敗血症性ショックに対して第1選択薬としてノルアドレナリン.十分な輸液とノルアドレナリンでも循環動態が維持困難な場合のアドレナリン・バソプレシン.心機能低下ではドブタミン.

初期輸液と循環作動薬に反応しない敗血症性ショックに,ショックの離脱目的で低用量ステロイド.ステロイド投与はショック発生6時間以内.ハイドロコルチゾン300 mg/day以下で最長7日間程度.ハイドロコルチゾン代替はmPSL.敗血症性ショックから回復した場合はステロイドを投与すべきではない.

敗血症性AKIに対する血液浄化療法は,高度な代謝性アシドーシス,高K血症や溢水など緊急導入が必要な場合を除き,早期導入は行わない.循環動態が安定していれば持続・間欠のどちらでも良く,不安定なら持続.敗血症性ショックに標準治療としてPMX-DHPを実施しない.敗血症性AKIの予防及び治療を目的としたフロセミド・ドパミン・ANP投与は行わない.体液過剰に対するフロセミド使用を否定するものではない.

ICU管理を要する敗血症では静脈栄養より経腸栄養.発症後数日のうちに経口摂取で十分な量のエネルギーを摂取できない見込みであれば,48時間以内に経腸栄養を開始.敗血症発症以前に栄養障害がない場合は,1週間程度はエネルギー消費量に見合う量を投与しない.栄養障害がある場合には投与量を制限しないが,Refeeding syndromeに注意する.発症以前に栄養障害がなく入院1週間以内に経腸栄養が開始できている場合は入院1週間以内の静脈栄養を行わない.発症以前に栄養障害があるか,入院1週間以内に経腸栄養が開始できない場合は経静脈栄養を開始,ただし設定エネルギー量の100%投与は行わず,至適投与量は不明.

過剰栄養は回避するという意味です

144~180 mg/dlを目標血糖値にインスリン治療.血糖測定は毛細血管を用いた簡易血糖測定ではなく,動脈血・静脈血を用いた簡易血糖測定か動脈血液ガス.

血糖測定はできるだけ正確な方法で

敗血症性ショックの初期蘇生において赤血球輸血はHb 7g/dl未満で開始.出血傾向がなく外科的処置も要しない場合,凝固異常値を補正する目的では新鮮凍結血漿の投与は行わない.出血傾向が出現した場合や外科的処置が必要な場合は「血液製剤の使用指針」に沿って血小板輸血.

頻脈・貧呼吸・苦痛など発熱に伴う生体反応が問題となっていなければ,ルーチンでは解熱療法を実施しない.低体温に伴う心収縮脳低下・心拡張脳低下・凝固異常などの合併症があれば,循環動態の安定化に配慮して復温.

DVT予防として,リスクレベルに応じて抗凝固療法・弾性ストッキング・間欠的空気圧迫法を行う.

人工呼吸器については,「ARDSガイドライン2016」に準じる.

鎮痛・鎮静・せん妄管理は「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」に準じる.


http://www.jsicm.org/haiketu2016senkou.html

by respiresi | 2017-01-07 08:30 | 感染症 | Comments(0)

角が立ちにくい紹介状の言い回し




by respiresi | 2017-01-03 22:36 | 医療安全・医療倫理 | Comments(0)