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肺真菌感染症

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ガイドライン
国内の深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014が簡便で使いやすい.日本感染症学会から出ている呼吸器感染症治療ガイドラインも概ね同じだがCPFGなど新しい薬剤のエビデンスが所々異なる.海外ではIDSAからガイドラインが出ている.

C.albicansはFLCZ(F-FLCZ).
C.glabrata, C.kruseiはF-FLCZが効きにくくキャンディン系.
C.parapsolosisはキャンディン系が効きにくくアゾール系.
Candida,Aspergillusは菌腫により薬剤感受性が異なり,珍しい菌腫が出たら感受性検査を検討.当院の微生物検査室スタッフは相当詳しいので相談してみましょう.


AMPH-B:アムホテリシンB(ファンギゾンシロップ・注),L-AMB(アムビゾーム注)
発熱,腎障害,低K血症,嘔気など副作用が多く注意.ファンギゾンシロップは精製水で希釈し,消化管よりの吸収なく口腔内カンジダに使う.L-AMBはAMPH-Bより副作用が少ないが高価.

FLCZ:フルコナゾール(ジフルカンカプセル,注),F-FLCZ:ホスフルコナゾール(プロジフ注)
軽度の消化器症状や肝障害あり.GFR 20~50 mlで半量,20 ml以下で4分の1に減量.

ITCZ:イトラコナゾール(イトリゾールカプセル・液・注)
経口では腎機能低下での投与量調節不要だが吸収は不安定.液剤は空腹時でカプセルは食直後に.PPI, H2ブロッカーとの併用で吸収低下.GFR 30 ml未満では静注不可.軽度の消化器症状や肝障害あり.

VRCZ:ボリコナゾール(ブイフェンド錠,注)
経口では腎障害による投与量調節不要で吸収率100%だが,静注は腎障害が出るため,Ccr 30 ml/min未満では静注不可.肝障害では4 mg/kg 1日1回に減量.食事で吸収低下あり.肝障害,一過性の視力障害あり.トラフ値は2~4.5 μg/mLに.RFP,RBTと併用禁忌.

5-FC:フルシトシン(アンコチル錠)
肝障害,骨髄抑制,消化器症状あり.

MCZ:ミコナゾール(フロリードゲル,注)
MCFG:ミカファンギン(ファンガード注)
軽度肝障害や消化器症状.
CPFG:カスポファンギン(カンサイダス注)
loading doseが必要.肝障害など.
アトバコン(サムチレール)
有効率はST合剤より落ちるものの,副作用が少ない.発疹など.


単純性肺アスペルギローマ(SPA:simple pulmonary aspergilloma)
血痰,喀血,空洞形成病変(菌球),アスペルギルス抗体陽性,喀痰やBFで検出,炎症反応上昇.
第1選択:外科的切除 
第2選択
・MCFG 150~300 mg/day 1日1回div
・CPFG 50 mg/回1日1回div(初回のみ70 mg/回)
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・VRCZ初日 300 mg/回 その後200 mg/回を1日2回内服
・ITCZ 200 mg/回 1日1~2回内服

慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:chronic progressive pulmonary aspergillosis)
慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA:chronic necrotizing pulmonary aspergillosis)と慢性空洞性肺アスペルギルス症を合わせて慢性進行性肺アスペルギルス症と呼ぶ.血痰,発熱,呼吸苦,咳,アスペルギルス抗原・抗体陽性,空洞の拡大,浸潤影,抗菌薬不応性,喀痰やBFでアスペルギルスが検出,炎症反応上昇.治療期間は2週間以上点滴とし,安定すれば中止,安定しなければ内服で継続.
MCFGのエビデンスレベルが上がった(J Infect. 2010 ;61:410-8.)
第1選択
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・MCFG 150~300 mg/day 1日1回div
第2選択
・ITCZ 400mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div
・L-AMB 2.5~5 mg/kg/day 1日1回div
・CPFG 50 mg/回1日1回div(初回のみ70 mg/回)
維持療法
・VRCZ 200mg/回 1日2回
・ITCZ 200mg/回 1日1~2回

侵襲性肺アスペルギルス症(IPA:Invasive Pulmonary Aspergillosis)
免疫不全,急性の発熱,胸痛,血痰,呼吸苦,胸膜摩擦音,急性に出現した結節影,空洞を伴う浸潤影,胸部CTでhalo サイン(結節状浸潤影とすりガラス影),三日月状陰影,β-Dグルカン陽性(感度65~100%,特異度77~100%),アスペルギルス抗原陽性(カットオフ1.0で感度 65%,特異度 94%),BFで検出,炎症反応上昇.
急激に増悪するため診断未確定でも経験的治療が必要.初期治療は少なくとも6~12週間は必要.
経験的治療 第1選択
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・L-AMB 2.5~5 mg/kg/day 1日1回div
・MCFG 150~300 mg/day 1日1回div
・CPFG 50 mg/回1日1回div(初回のみ70 mg/回)
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div
標的治療 第1選択
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・L-AMB 2.5~5 mg/kg/day 1日1回div
標的治療 第2選択
・MCFG 150~300 mg/day 1日1回div.
・CPFG 50 mg/回1日1回div(初回のみ70 mg/回)
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div
重症例ではMCFG・CPFGは他剤と併用.

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA:allergic bronchopulmonary aspergillosis)
喘息,末梢血好酸球増加,アスペルギルス抗原に対する即時型皮内反応陽性,アスペルギルス沈降抗体陽性,血清IgE高値,肺の浸潤影,中枢型気管支拡張症が特徴.Rosenberg,Patterson,Greenbergerなど複数の診断基準がある.治療はPSL 0.5 mg/kg/日より開始し漸減とITCZを16週以上.

ステロイドを基本とし,以下の抗真菌剤を用いる.
第1選択 ITCZ 200mg/回 1日2回
第2選択 VRCZ初日のみ300mg/回,その後200 mg/回 1日2回内服

口腔カンジダ症oral candidiasis
口腔粘膜の白斑・潰瘍,舌痛,擦過細胞診.特にステロイド使用中は注意. 
第1選択
・FLCZ 100~400mg/day 内服
・ITCZ 200 mg/day 内服
第2選択
・VRCZ 200 mg/回 1日2回内服
・MCFG 100~150 mg/day div
・CPFG 50 mg/day div
・AMPH-Bシロップ 100 mg/ml 1回1~5ml 1日2~4回
・MCZゲル 100 mg/回 1日2~4回

食道カンジダ症
嚥下痛,嚥下困難,胸やけ,胃カメラで白斑.
第1選択
・FLCZ(F-FLCZ)100~400 mg/day divまたは内服(FLCZは 200~800 mg/day 1日1回divを2日間でloading)
・ITCZ 200 mg/day 内服
第2選択
・VRCZ初日のみ6 mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・MCFG 100~150 mg/day div
・CPFG 50 mg/day div

カンジダ肺炎

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非常に稀.常在菌であり痰から出ても感染とは言えず,生検で診断がつく.免疫抑制の患者で血行性に肺病変をきたすことはある.
痰からカンジダが出ただけでカンジダ肺炎という,勘違いされている例は結構多い.カンジダ肺炎?カンジダ血症と考えて良い.この状態だと,肺生検できる状況にないことがほとんど.

カンジダ血症・播種性カンジダ症
カテーテル感染,抗菌薬不応性の発熱,視力低下,霧視,肝臓多発膿瘍,胆道系酵素↑,カンジダ抗原高値,β-Dグルカン陽性,血液培養で検出,炎症反応上昇.眼内炎合併に注意.
抗原価2倍は有意ではないことが多い.血培からカンジダが出たら,即治療.

標的治療は,
・カテーテル抜去
第1選択
・FLCZ(F-FLCZ)800 mg/day div 2日間の後400 mg/day div,あるいは初期5日間AMPH-B 0.7 mg/kg/dayと併用可.
・MCFG100~150 mg/day 1日1回div
第2選択
・VRCZ初日のみ6mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
・L-AMB 2.5 mg/kg/day 1日1回div
・AMPH-B 0.5~1.0 mg/kg/day 1日1回div
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div 

肺クリプトコックス症pulmonary cryptococcosis
無症状,下肺野に結節影(胸膜側に孤立または多発),浸潤影,空洞影,健常者でも発症,クリプトコックス抗原陽性(感度 67%,特異度100%),喀痰やBFで検出.β-Dグルカンは上昇しない.非免疫不全者では髄液検査は必須ではない.治療期間は3カ月~1年間.トリコスポロンとリウマトイド因子で偽陽性あり.
非HIVで髄膜炎なしの場合
第1選択
・FLCZ(F-FLCZ)400 mg/day div(F-FLCZは 800 mg/day 1日1回divを2日間でloading)
またはFLCZ 200~400mg1日1回内服
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回divまたは内服
重症例や第1選択の無効例
・5-FC 100 mg/kg/day内服 を併用
・VRCZ初日のみ300mg/回,その後200 mg/回 1日2回内服
・L-AMB 2.5~6 mg/kg/day 1日1回div
治療期間は,基礎疾患なければ3カ月,基礎疾患があれば6カ月を目安に.

ムーコル症(接合菌症)mucormycosis
著しい免疫不全に発症.肺病変は発熱,咳,CTで斑状陰影・浸潤影・空洞影.β-Dグルカンは上昇しない.VRCZ無効の場合に疑う.
限局性病変は外科的切除.AMPH-B 1 mg/kg/day divまたはL-AMB 5 mg/kg/day div.AMPH-B 2,000 mg(L-AMBなら 10,000 mg)まで投与する.
アスペルギルスは痰から出たら感染が疑わしいです.アスペルギルスを肉眼で見たい人は「石川 雅之. もやしもん1. 講談社: 2005.」を読んで下さい.

ニューモシスチス肺炎(PCP:Pneumocystis pneumonia)
胸部XPで所見がなくてもCTではすりガラス影が見えることがある.β-Dグルカンは23.3 pg/ml(MK法)で感度96%, 特異度88%.喀痰や気管支洗浄液で栄養体のDiff-Quick染色や嚢子のGrocott染色やカリニPCRを提出する.ただし,カリニPCRでは定着だけでも陽性となる.Non-HIVでは菌量が少なく過剰免疫による呼吸不全とされる.BAL感度は40~50%,PCR感度は87%.

Non-HIVでは地図状のすりガラス影. HIVでは嚢胞性変化.

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ステロイド20 mg/day,1ヶ月以上のときは予防投与を行う.
予防投与は
① バクタ 1錠連日or 2錠隔日投与
② ペンタミジン吸入(300 mgを蒸留水に溶いて1ヶ月に1回吸入.生食やTZでは混濁を起こす.気道刺激性と気管攣縮の危険あり,医療者の曝露予防と換気,事前にメプチン吸入を行っておく.)
③ アトバコン1500 mgを1日1回内服
治療は,
① バクタ9~12錠/day(トリメトプリム15~20mg/kg)と,PaO2 <70 mmHg (room air)ならステロイド補助療法を用いる.非HIV症例では14日間治療する.プレドニン経口or点滴で
day 1~5 : PSL 1 mg/kg/day または 80 mg/dayを分2
day 6~10 : PSL 0.5 mg/kg/day または 40 mg/day分1
day 11~15 : PSL 0.25 mg/kg/day または 20 mg/day分1
② バクタが使えないとき,ペンタミジン3~4 mg/kg/day.1日1回(注射用水5 mlに溶かしTZまたは生食100 mlに希釈)だが,高血糖,膵壊死など副作用が多い.
③ アトバコン750 mgを1日2回21日間

トリコスポロンTrichosporon
好中球減少や血管内カテーテル留置患者に発症.Β-Dグルカン,クリプトコックス抗原陽性あり.
第1選択
・VRCZ初日のみ6mg/kg/回,その後4 mg/kg/回 1日2回div
第2選択
・FLCZ(F-FLCZ)400 mg/day div(FLCZは 800 mg/day 1日1回divを2日間でloading)
・L-AMB 2.5~5 mg/kg/day 1日1回div
・ITCZ 400 mg/day 2日間の後200 mg/day 1日1回div 

【参考文献】
1. 深在性真菌症のガイドライン作成委員会. 深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014.協和企画; 2014.
2. 細川 直登,前崎 繁文,大曲 貴夫.臨床感染症ブックレット2巻 エンピリック治療の抗菌薬,確定治療の抗菌薬を選択する. 文光堂; 2010.
3. 日本臨床腫瘍学会.発熱性好中球減少症診療(FN)ガイドライン. 南江堂; 2012.
4. 日本感染症学会, 日本化学療法学会. 呼吸器感染症治療ガイドライン. 杏林社; 2014.
5. 河野 茂. 深在性真菌症Q&A 改訂第3版. 医薬ジャーナル社; 2007.


by respiresi | 2015-04-16 22:32 | 感染症